フロー体験 喜びの現象学を読んで

チクセントミハイさんの「フロー体験 喜びの現象学」を読んでの感想。

一言でいうと、勉強になることが本当に多く、実体験からも納得できることが多い本であった。自らの価値観に問いを立ててくれる、このような本は、人生・生き方の質に対するレバレッジが非常に高い。

もっと、こういった本を読んでいきたいと今は思っている。

以下、要約と感想。

要約

幸福かどうかを決めるのは、快楽や外的報酬ではなく、内的報酬である。内的報酬は、フローに入った時に感じるものである。従って、私たちは「いかにフローに入れるのか」という観点で、日々を過ごして行くことが合理的と言えるし、筆者はそれを勧めている。

快楽とは、遺伝的に条件付けられた報酬。外的報酬とは、文化に条件付けられた報酬である。これらは内的報酬とは違う。

外的報酬の特徴は、

  1. 枯れることがない(達成しても、"もっともっと")

  2. 報酬そのものに価値を置くため、環境依存

  3. 外部報酬に従っていると、他者にコントロールされやすい(「社会化」も一種の統制下にあることの証)

の3つが挙げられる。

外的報酬を追い続ける人生は、「枯れることがない」から持続可能性を持たず(達成しても、もっともっととなり、いずれは達成できなくなる)、「環境依存」であるから脆弱で、「他者にコントロールされやすい」からそもそも論として望ましくない
※最後の部分は価値観によるが、人生を省みたときに「やりたいこと、やっていなかったな。。」という感想を抱くリスクがある。

一方内的報酬は、やっていることそのものが報酬。また、我々の認知によって生み出される。
「状態」が報酬であるから、持続可能性を持ち、認知によって生み出されるため環境依存的ではない。加齢、何かしらの破滅的な出来事が起きても、「認知」は統制可能である。

そして、内的報酬はどのような時に生まれるのかといえば、フローに入っている時だ。フローとは、注意が一つのことに集中している状態を表す。

我々は、注意が分散している時、ネガティブな考えが意識内に潜入してくる。そして、多くの人は簡単に注意を構造化するためにTVやSNSを見て、注意を構造化しようとする。しかし、これらの行為は全く挑戦的ではないが故にフローではなく、従って内的報酬を得られない。TVを見ながら、多くの人は内心とても退屈している。

TVのような対症療法的な解決策ではなく、注意集中できる手段を見つける必要がある。それがフローである。

フローに入る条件は4つほどある。

  1. 明確な目標がある(目標の大小は重要ではない)

  2. 明確なフィードバックがある

  3. 没入できる

  4. 挑戦と能力が適合している(簡単すぎると退屈、難しすぎると不安)

テニス・チェスなどの古典的なゲームや、ダンス・宗教などの文化はこれらを満たすように設計されている。

我々の生活は、仕事と他者との関係の2つが大きな割合を占める。したがって、この2つをフローに転換することが重要である。

他者との関係において言及すると、我々は他者といる時に幸福感を感じる。他者との関係もフローになるように、「挑戦」や「目標」が必要である。

常に、認知を統制するのは簡単なことではない。特に人生には外的環境がひどくなる時期が必ずやってくる。そのような状態でも認知を統制し、人生を豊かにするには逆境を楽しむ能力を鍛え、積極的にストレス要因に対処することが大切だ。

積極的にストレス要因に対処するとはどういうことか。ストレスに対処する方法は、大きく2つある。

1つは積極的な対応。問題を論理的に分析し、解決策を考えることだ。
もう1つが消極的な対応。飲酒やストレス発散など、問題を意識の外に追いやろうとすることだ。
常に「積極的な対応」のみを取る人はおらず、問題が起きて数日は消極的な対応でも構わない。しかし、根本的に対処するには積極的な対応を取る必要がある。

また、逆境を楽しむ能力とは、「すべてを能力発達の機会と捉える」ことである。
社会的に条件づけられた「良し悪し」に執着せず、あくまで自分の目標を達成するための過程と捉えることだ。そして、「システムは自分の好みとは異なるものに従う」という事実に自覚的になると、これらの見方を発達させやすくなる。

宇宙は自分を中心に回っているわけではない。企業は、(あなたがサラリーマンである場合)あなたのやりがいを最大化するシステムではない。うるさい隣人は、あなたが快適な暮らしを起こることを志向したシステムには生きていない。彼らは彼らの暮らしが快適になることを意図している。

このような全体システムを捉え、全てが思い通りにならないことを認めた上で、建設的な解決策を考えることが大切である。

そして、生活の一部の活動ではなく、ライフテーマがあると全ての活動に意味が生まれ、全ての活動がフローになりうる。より大きな挑戦を提供するという意味で、自己を超えた目標を追うと、より生活の質は高くなりやすい。

自己に注意を向けすぎず、目標の達成に注意を置くことで、自己のカオスを避けて、心を統制できるようになる。

感想

内的報酬と外的報酬が異なるということに、気づけて本当に良かったと感じる。私の少ない人生を振り返っても、実際にそうである。人生で一番嬉しい瞬間というのは、内的報酬が達成された時であった。

この本が良いと思うのは、あくまでも「幸福」のために、自己を超えたより大きな目標を追求すること、能力と適合した目標に挑戦することを勧めているという点である。"善人"になることを勧めている本ではないから、読者も素直になって読める。

私自身、常に能力と適合した目標に挑戦しているかという点を意識して人生を送っていきたいと思った。また、結局自分の評価が重要なのだ。自分が楽しいと思うか、挑戦しているかが大事なのだ。状態・主観が大切なことに気づけると、「成功しなくては」みたいな小さい考えに囚われる必要はなくなる。いまの状態がどうなのかというところに主眼を置こうと思う。自分も大きい、世の中を利することをやっていきたいと思う。世界をワッと言わせて、知らない誰かに笑顔になってもらうことをしたい。

この本にも書かれている通り、人生うまくいかないこともたくさんあるだろう。しかし、それでいいのだと思った。うまくいかないということは、失敗ではない。挑戦機会なのだ。それによって、能力を向上させ、自分基準で能力を発達させていけば良い。他の人の基準は、クソくらえだ。

ストレスの対処方法も大変参考になった。世界はシステムで動いてるが、決して自分中心には回っていない。システムは目的を持って作られている。そのことに、より自覚的になれた。

この本の要約が、いまいち構造的になってないことからも分かる通り、本書の理解度は50%程度といったところなのだろう。もしかしたら、もっと低いかもしれない。

今後も、何回か読んで、折に触れてこの考えを自分に刻みたい。と同時に、自分にもビジョン・バリューを作り、その達成に向けて人生を生きていきたいと思った。フラフラ、なんとなく他者が作ったシステムのもとで生きるのではなく。

現状のシステム・構造について理解を深めつつ、自分が何をなしたいのか・どうしていきたいのか・どういう世界にしていきたいのか、考えを深め、目標に落としていきたい。β版でいい。そして、事業目標と同様に、目標を決めるのは簡単ではないし、インプットしながら都度修正していけば良い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?