プロダクトマネジメント~ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける~を読んで。
Melissa Perri著のプロダクトマネジメント~ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける~を読んでの感想。
実は読むのは2回目である。1回目の感想を覚えていないのだが、前読んだ時より、いい本に感じた。新しい気づきもあり、忘れていたことを思い出すこともあった。この本に限らず、いい本は何回も読むといいというのは、本当だなぁ。他の本も、いいやつは何回も読みたいと思う。
この本の内容を見ると、PdMの役割は、「不確実性の高いプロダクト開発において、全体方針の理解・情報収集・思考によって、間違った方向に行くリスクをできるだけ下げる」ことだなと思った。開発は、そもそも誰に開発すべきなのか、ターゲットユーザーがどんな課題を抱えているのか、そしてその解決策は何が適切なのかなど、わからないことが多い。それらの解像度を、あげ、「勘」に頼らずに、求められるものを作っていきましょうねということだと理解した。
要するに、顧客理解、裏付けor検証を行うの2つだなぁと。
以下、細かい要約。
ビルドトラップとは
ビルドトラップとは、アウトカムではなく、アウトプットで成功を計測している状態である。結果として、ユーザーにとっての本当の価値を生み出せなくなり、企業はマーケットシェアを失い、混乱に陥る。
ビルドトラップに陥ると、「一番重要である講座の作成や受講者のコメントに対する返信の邪魔になる新機能が多かったためです」みたいな機能マシマシプロダクトが出来上がることも多い。
価値交換システム
本質的に、プロダクト・サービスそのものに価値はない。問題解決に価値がある。
機能そのものに価値を見出すと、顧客の2%しか使っていない機能に機能追加しようとしたり、いろんな顧客の要望に応えようとしすぎて、たった1つの顧客のニーズしか満たさない単発の機能がたくさん生まれたりする。
PdMの役割
PdMの役割は、ビジネスと顧客の両方を深く理解し、チームがどんな方向に進んでいくのかを決定することだ。なぜそのプロダクトを作っているのか、どんなアウトカムを生み出すのかを、説明する必要がある。
仕様を作るのは、PdMの目的ではない。「優秀な開発者との会話と、1/10くらいのドキュメントがあれば、同じことを実現できた」
悪いPdM
・ミニCEO
傲慢で開発者全員に嫌われるPdM。また、誰の意見も聞かず、結果として誰も使ってくれないもを作ることがある。誰にも使われないと、チームはモチベーションをなくして、速度を落としていく。
誰にも使ってくれないことを回避するには、「問題に恋せよ」だ。
・ウェイター
ステイクホルダーのところに行って、何が欲しいかを聞き、それを開発すべき項目のリストにする。そこには、目標もなければ、ビジョンもない。
・プロジェクトマネージャー
「いつ」にこだわり、「なぜ」にこだわらない。
良いPdM
会社の戦略を理解して、チームがどこの方向に向かうのかを理解しているPdMは、良いPdMだ。彼らは、チームメンバーに方向性を伝える。
そのためには、マーケット・ビジネスの仕組みの理解、会社のビジョン・目標を本当の意味で理解する必要がある。
また、良いPdMには、人に影響を与えるスキルが不可欠だ。PdMは、自分たちが作っているものが正しいことを、チーム・会社全体に納得させる必要があるからである。
良いPdMは、「なぜ」から始める。優れた戦略とは、単なる機能の列挙ではない。より高いレベルのビジョン・目標に焦点を与えるべきである。
戦略展開
戦略とは、組織全体で語られるストーリーを相互に結びつけ、特定の時間枠における、目的とアウトカムを説明するものである。
本書では、ストーリーを伝えて、足並みをそろえさせる行為のことを「戦略展開」と読んでいる。幹部は5年単位、ミドルマネジメントは1年・四半期単位、チームは月・週単位でのストーリーを大切にし、日々の行動と結果が一致しているかを確かめつつ進む。
チームには、十分な制約がないと、行き詰まる。選択肢が多すぎて、どう進むべきか、決められないのだ。
戦略展開は4つのレベルに分けられる。
・ビジョン
・戦略的意図
・プロダクトイニシアチブ
・オプション
である。
ビジョン
ミッションは、企業の存在理由を説明するものであるのに対して、ビジョンはその目的に基づいて、どこへ行くべきかが説明されている。
ビジョンは、集中すべきところが明らかになるように、具体的かつ、焦点を定めるものでなくてはならない。
戦略的意図
ビジョンの実現につながる、現時点での重点分野を伝える。問いとしては、「現在の状況を踏まえて、ビジョン実現のために、自分ができる一番重要なことは何か」である。
目標はハイレベル(階層の話) かつ ビジネスに焦点を当てたものである。
例: 〇〇の収益増加、〇〇のコスト削減
プロダクトイニシアチブ
ビジネス目標を、プロダクトで解決する問題に変換したものである。
例えば、
戦略的意図: 個人ユーザーの収益の年次成長率を15%から、30%に
であった時、
プロダクトイニシアチブ
1. サイトで関心の多い領域のコンテンツを増やし、多くの個人ユーザー獲得 + 既存ユーザーのリテンションを向上させる。結果として、月265万ドルの収益増加を達成する。
2. 受講者が自分のスキルを証明する仕組みを作ることで、新規ユーザー獲得を進める。結果として、月150万ドルの収益増加を達成する。
といった感じである。
オプション
プロダクトイニシアチブを実現するための、ソリューションのことを指す。
PdMの責任
PdMは、プロダクトイニシアチブ・オプションが、既存のプロダクトビジョンと一致するようにする責任がある。
プロダクトビジョンは必要だ。プロダクトビジョンがないと、個々の顧客の要求に満たすための開発が多くなり、幅広い顧客に対応できなくなる。プロダクトビジョンは、具体的にしすぎず、中心的機能だけを書く。
ノーと言う
時間を作るには、いくつかのことに対して「ノー」と言わなければならない。
プロダクトのカタ
プロダクトのカタとは、適切なソリューションを明らかにするということ。
価値提案の中心でないものに対して、時間を費やして、ユニークで革新的なソリューションを設計したり、作ったりしないこと。(例: ECサイトの購入ページ)
価値提案を作るものに、時間とエネルギーを使おう。
機能は少なければ、少ないほどよい。さもないと、顧客が機能疲れする。重要なのは、数ではなく、品質である。
問題の探索
顧客の問題を取り巻く状況の理解があってはじめて適切なソリューションが作れる。そのためには、ユーザーと話すことが大切である。
ロードマップ
ロードマップは、ガントチャートではない。戦略・現状を説明するための道具である。であるがゆえに、プロダクトロードマップは常時更新する必要がある。
最後に
1年前、こう書いてた
```
感想を端的にいうと、基本的な内容を記した本で、読みやすい。ただ重要なことが書いてあった。正論が書いてあるので、どれだけ実行できるかということが最も大事。特にユーザーインタビューなどは、心理的にも負担が多いことから、PdMは避けがちだが、ここが一番重要であることを忘れてはいけない。いかにお客様の役に立てるか、彼らが何で困っているのかを知ることが最も大切なのである。そして、作り手側は妄想することはできても、推測することはできない。データやインタビューといった一次情報から、組み立てることが大切だなと思った。
```
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