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2024.3.5『SS 終わらせてしまった話』



SSです



氷柱


「地獄でも××××、するんでしたね
 忘れるところでした」

 気づけば世界はホワイトアウトしていた。

 私達は吹雪に飲まれて、私達から私になり、そうして私もいなくなった。
 ×××××さんは終わってしまった。
 ああもう、この事実は世界の損失だ。インターネットは大層荒れることだろう。そうして忘れられていく。だから嘆くことでは無い。悲しみも喜びもいつかは忘れてしまうからこそ人は救われる。私を構成するものは幾つかあるけれども、その中でもとても大きくて重くて時々うざいが愛しいもの。それが×××××という存在だった。いつの間に奥深くまで侵食していたのだ。しかも勝手に終わって、相棒である私を置いていくなんて。

 ……本当はね、良かったなぁ、なんて考えている。

 え、薄情だと思う? うるさいなあ。私の思考の中では私が神なのだから、拳くらい自由に無遠慮に下させろ。
 だって終わってしまったという事は、それはつまり不本意な事なのだ。彼が望んで終わったわけではない。今頃この重い肉体を捨てて羽でも生やして器用に空でも飛んでいる事だろう。

 片や私は『終わらせてしまった』から。
 あと少しで必然的に終わる筈だった生命活動を自ら終わらせた。
 地獄に落ちたかった、だって約束したから。
 地獄でも、×××××をすると約束したから。
 そこに×××××さんがいなくても、約束を……したから……。


 ♢    ♢    ♢


 気づけば世界はホワイトアウトしていた。

 真っ白な空間に巨大な扉がそびえ立つ。私は扉にもたれかかって、床にぺたりと座り込んだ。雪みたいに冷たくないだけで快適に感じてしまう。
 扉の奥にはどんな地獄が広がっているのだろう。いつか私達が考えた地獄の世界があったら面白い。あれはいつの事だったっけ。忘れちゃったよ。わすれたくなかったのにな。

 さむくないのに、さむいなあ。

 ……

 …………

 ………………

「×××」
「……」
「ねえ、×××。遅くなってごめんね。ずっと探してたんだよ。絶対天国にいると思ったのに、まさかこんな所にいるなんて……方向音痴にも程があるだろ」
「……?」
「天国さぁ、結構つまんなかった。×××がいなかったからだろうけど。とりあえず地獄で管理職でもやって暇な時に×××は本でも読んでさ。そんで一緒に

 ――××××××しよう」

「……ぁ、ァ……

 ふふ、忘れるところでした」

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