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読めばわかる「先物取引」とは?市場への影響なども含めて詳細に解説!

こんにちは、Kanonです。

今回は「先物取引」についてご説明していきたいと思います。

個別株だけに注目しているとあまり意識されないかもしれませんが、実際に先物取引をしなくても、全体の相場の流れを読む上で重要ですので、しっかり押さえておいてくださいね。

先物取引とはどんな仕組み?

先物取引とは、「ある商品」を「将来のある時点」で「いくら」で売買するかを約束する取引です。つまり、あるものの価格が、ある時点でいくらになるか予想しての取引が行われているわけですね。

イメージをしやすいように具体的な例を考えてみましょう。

コロナ禍でのガソリン価格を例に挙げてみますね。
たとえば、現在のガソリン価格が120円/Lだとします。

ガソリン価格

Aさんは、3ヶ月後には、世界経済が大分回復して、ガソリン価格が今よりも高くなっていると予想しています。
そこで、市場価格よりも安い価格で買って得できるように、3ヶ月後に120円/Lで100Lのガソリンを買う(売ってもらう)約束をすることにしました。

逆に、Bさんは、3ヶ月後には、コロナの感染第2波が深刻になって、ガソリン価格は今よりも安くなっていると予想しています。
そこで、市場価格よりも高い値段で売って儲けようと、3ヶ月後に120円/Lで100Lのガソリンを売る(買ってもらう)約束をすることにしました。

3ヶ月後にガソリン価格が130円/Lとなった(上昇した)場合、

ガソリン②

Aさんは、120円/Lで100Lのガソリンを買う約束をしていたので、普通に買うよりも安くガソリンを購入することができます。市場で買うよりも1Lあたり10円お得に買えますから、100Lで1,000円の利益になりますね!

Bさんは、約束を守って、120円/Lでガソリンを売らなければなりません。そのために130円/Lを払って市場でガソリンを買ってこなければならなくなるので、1Lあたり10円、100Lで1,000円の損失が出ることになります。

逆に、3ヶ月後にガソリン価格が110円/Lになった(下落した)場合、

ガソリン③

Aさんは120円/Lで100Lのガソリンを買う約束をしてしまっています。結局約束などせずに市場でガソリンを買っていた方がお得だったということになりますが、1Lあたり10円高く買わなければいけないので、100Lで1,000円の損失が出ることになりますね。

Bさんは、120円/Lで100Lのがガソリンを売る約束をしていたので、市場で安く仕入れたガソリンを、高く売却することができます。1Lあたり10円の差益がでますので、100Lで1,000円の利益を得ることができますね。

少しイメージが湧いてきたでしょうか?
続いてどんなものが取引の対象になるかを見ていければと思います。

先物取引の対象になる商品・株価指数って?

先物取引には、「商品先物取引」と「金融商品先物取引」の2種類があります。

商品先物取引とは、大豆やコーンなどの農産物、貴金属や非鉄金属、原油や石炭などの幅広い商品を対象した先物取引です。金やプラチナなどの貴金属の取引は個人でもされている方が多いほか、コロナショックの相場下落時には原油市場が話題になりましたね。

商品先物取引の歴史は古く、日本では、1,730年代から米の先物市場があったそうです。米の価格は天候や天災などの要因で常に変動しますから、予め売買価格を決めておくことが、農民の生活安定につながったことは容易に想像がつきますね。

もう一方の、金融商品先物取引は、国債などの債券や株価指数などを対象にした先物取引です。

株価指数先物取引では、「日経平均株価」「TOPIX」「マザーズ指数」「ナスダック指数」「ダウ平均」など主要な株価指数が取引対象となっています。株式市場参加者の言う「先物」はこちらを意味することが多いので、ここからは株価指数先物取引を中心として話を進めていければと思います。

先物取引の限月って何?

先物取引は「ある時点」での価格を予想して行われる取引ですから、取引の期限が商品ごとに決まっています。この期限のことを「限月(げんげつ)」と呼びます。

例えば、国内の金先物取引では、6限月制を採用しているため、常に取引期限の異なる6銘柄の取引が可能で、具体的には、2・4・6・8・10・12月に取引期限が設定されています。この中で期限が一番近いものを「期近(きぢか)」、期限が一番遠いものを「期先(きさき)」と呼ぶこともあります。

先物

日本の債券・株価指数先物取引の場合は、限月は、3・6・9・12月と決められていて、たとえば3月が期限の先物は3月限(さんがつぎり)と呼ばれます。
また、株価指数先物取引において満期日に算出される価格を「特別清算指数」「最終清算指数」または、「SQ値」と呼びます。SQとは「Special Quotation」の略です。
SQ値は、原則として各月の第2金曜日に指数の構成銘柄の始値をもとに算出され、大引け後に発表されます。

実際に先物取引を行う際の注意点って?

先物取引は満期日時点でのものの価値を予想する取引と説明してきましたが、実際に市場で先物取引を行う際には満期日を待たないでも、反対売買による決済を行うことができます。

たとえば、9月限の日経平均先物をこれから株価が上がると思って2万2,500円で買った場合...
「株価が上昇基調を強めて先物価格も2万4,000円を達成したけど、これ以上の上値は重そうだから一旦利益を確定しよう」ですとか、
「悪材料があって相場が急落して、これ以上の損失は耐えられないから、一旦売却して損を確定しよう」といったことができるわけですね。

こういった取引が、国内では大阪取引所、アメリカではシカゴ・マーカンタイル取引所などを介して、昼夜行われています。
では、実際に先物取引を行うとしたら、どんなことに注意をすればいいのか、メリットとデメリットを考えてみましょう。

先物取引のメリット

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・値上がり、値下がりのどちらでも利益が狙える

買いと売りの両方でポジションを持つことができるのが先物取引の大きな利点だと思います。
たとえば、現物で含み益になっている銘柄をいくつか持っていて、「まだ上値は追えそうだけど、少し相場全体が重くなってきたな」と感じたときには、株価指数先物を売ることでリスクヘッジができますね。

・レバレッジ取引ができる

先物取引では、現物を実際に売買するだけの資金を用意しなくても、証拠金を預け入れることで、その何倍もの金額を動かすことができます。
FXでもお馴染みの方もいらっしゃるかとは思いますが、この効果を「てこ(Lever)」の原理、レバレッジと言います。企業の経済活動において、他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めることもレバレッジと呼ばれますね。

少額で始められて個人投資家にも手掛けやすい「日経225mini」の場合、11万4,000円程度(6月22日時点)で1枚(日経平均株価を100倍にした金額)の取引を行うことができます。日経平均株価は2万円台を推移していますから、20倍近いレバレッジを利かせられるということです。

この必要証拠金額は市場のボラティリティなどに応じて日本証券クリアリング機構が公表する「SPAN証拠金」を元に各証券会社が決定しており、一般的には1枚あたりSPAN証拠金の100~160%程度の預け入れが必要になります。
相場が大きく乱高下していると、リスクが高くなるため、必要な証拠金額も大きくなる点に注意が必要です。

・夜間も取引が可能

商品先物市場にも金融商品先物市場にも、日中立会と夜間立会がありますので、夜間に売買することも可能な点がメリットと言えるでしょう。
現物株を中心に売買を行っていて、日本時間の取引終了後に急な相場変動が起きた場合は、とりあえず株価指数先物でリスクヘッジを行うこともできますね。

・流動性が高く、大きな資金を投じやすい

個別株に比べて株価指数先物市場は流動性が高いため、大きな資金を動かしている投資家にとっては扱いやすい点もメリット言えます。

先物取引のデメリット

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・追証のリスクが伴う

レバレッジが効かせられる分、投資金以上の損失を被るリスクが伴います。
場合によっては、一瞬の大きな相場変動によって、資金が全てなくなってしまうなんてこともあり得ますね。

また、含み損が生じて、証拠金維持率が証券会社の指定の額を下回ってしまうと、追加で証拠金を差し入れる(追証を払う)必要が出てきます。
証拠金を期限までに差し入れなかった場合、強制的に建玉を決済されてしまいますので、手元資金に対して大きすぎるポジションを持つなどの、リスクの高い取引は避けるべきでしょう。

・期限までに決済を行う必要がある

当たり前ですが、先物取引は期限までに決済を行わないと、清算値にて自動的に決済されてしまいます。

「ロールオーバー」といって、一旦保有しているポジションをSQ通過前に清算して、次の限月でポジションを立て直し、実質的にポジションを持ち越すこともできますが、どちらにせよポジションを決済する必要が出てきます。

現物株ですと損が出ても「上がるまで何年でも放っておく」という選択ができますが、先物取引は、期限までにどうするか決めなければいけないわけです。

先物取引が現物株市場に与える影響とは?

だいたい仕組みはわかったけど、先物取引をするつもりはないよ...といった場合でも、株式投資をするのであれば、先物市場の動きをある程度意識しておくことで、取引に有利にはたらくことがあります。

先物主導でなぜ株価が動くの?

株式市況などを読んでいて「先物主導で売りが出て日経平均株価が下落した」といった文面を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。

この場合の先物というのは一般的には大阪取引所の日経平均先物を指します。「先物主導で相場が動いた」というのを言い換えると「何らかの材料などを受けて、まず、日経平均先物が大きく動いて、それに鞘寄せる形で現物の日経平均が買われたり売られたりした」ということになります。

みなさんも、「米大統領が米中摩擦激化を示唆するような発言をした」「FRBが緊急で利下げを行った」といったニュースが出た瞬間に、一気に相場が大きく上がったり下がったりしたのを経験したことはありませんか?

近年はこういったニュースに瞬時に反応するようなアルゴリズム取引を組んでいるファンドがあり、ニュースの見出しを見て、先物市場で大きく売りが出たり、買いが入ったりすることがあるのです。
株価指数先物は、個別株よりも流動性が高く、機関投資家が大きな資金を動かして短期的に利益を狙うのには都合がいいという面もありますからね。

では、その先物価格の変動が、なぜ現物の日経平均株価にも反映されるのでしょうか?

これには、機関投資家が行っている「裁定取引」が関係しています。

先物価格を日経平均株価に反映させる裁定取引とは

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前述したように、株価指数先物は満期になると指数採用銘柄の始値で算出されたSQ値で清算されます。
これを利用して、先物と現物の間にできた価格差を利用して儲けようとする取引が「裁定取引」です。

具体的に、裁定取引の仕組みについて説明しますね。

例えば、7月のある日の13時時点での
日経平均先物9月限の価格が2万2,500円
日経平均株価(現物の価格)が2万2,400円

だったとします。

このような価格差が生じた場合、機関投資家は先物を売って、現物を買うという「買い裁定取引」を行います。

その後、数か月経って9月の先物SQ(特別清算指数)算出日が訪れ、当日の日経平均株価の始値=日経平均先物9月限のSQ値が2万4,000円となったとします。

この場合に機関投資家は2万4,000円で、既に持っている先物の2万2,500円の売りポジションと、現物の2万2,400円の買いポジションを決済することになりますが、

それぞれの損益は

先物売り分 2万2,500円-2万4,000円=-1,500円
現物買い分 2万4,000円-2万2,400円=+1,600円

つまり、

-1,500円+1,600円=+100円の利益となります。

このように「高い方を売って、安い方を買う」裁定取引を事前に行い、「SQ算出日には、先物、現物ともに同じ価格で決済できる」という仕組みを活かすことで、SQ値がいくらになったとしても100円の利益を生むことができるのです。

裁定取引に関しては、「簡単に利益を確保できてずるい」などとも言われるのですが、先物と現物価格が乖離しすぎてしまうと、市場が不安定になるなどの問題が生まれてきてしまいます。

裁定取引により流動性も高まりますし、市場の健全な価格形成能力を維持するためには必要な取引と言えるでしょう。

SQ算出日の前後は相場が荒れやすい!?

SQ算出日の寄り付きは、大型株を中心に大量の売買注文が出て、売り買いが交錯しやすいです。機関投資家が、裁定取引に絡んだ現物の持ち高を解消するための注文を出す必要がありますからね。
なので、SQ算出日の寄り付き時点での保有銘柄の売買板がいつもと違っても、過度にショックを受けたり、喜んだりしないようにご注意くださいね。

また、SQを控えた週は相場が荒れやすいというアノマリーもあります。これは、ロールオーバーが順調に進まなかった場合に短期的に売買が膨らむ可能性があるほか、SQ値がいくらになるかによって損益が大きく変わる投資家が多く存在することなどが要因だと見られます。

ちなみに、SQ前の相場の動きには、先物取引だけではなく、「オプション取引」に関連した売買も関係します。オプション取引についてはまた長くなってしまうので、別の記事に書いてく予定です。初心者でもできるオプション取引の有効活用の仕方などにも触れていきたいと思いますので、楽しみにしていてくださいね。

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