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ホロホロ鳥のホロホロとは何か

ホロホロ鳥はアフリカに生息するキジ科の鳥です。
西アフリカのギニア湾岸が原産と考えられています。

そのため英語で「ギニア・ファウル」と呼ばれています。
ギニアの鶏という意味です。

古くから食用として家禽化されてヨーロッパに伝わりました。
ヨーロッパでは当初「ターキー」と呼ばれていたようです。

しかし後から伝来した七面鳥がホロホロ鳥と混同されるようになり、いつしかターキーは七面鳥のことを指す言葉になりました。

哀れなホロホロ鳥は七面鳥に名前を奪われてしまいました。
なぜホロホロ鳥は七面鳥に負けてしまったのでしょうか。

ホロホロ鳥は非常に神経質な鳥であり飼育が難しいとされています。
そのため七面鳥ほど広く普及しなかったと考えられます。

そもそもホロホロ鳥は熱帯の鳥ですから寒さが苦手です。
寒冷なヨーロッパには向いていなかったのかもしれません。

それでも温暖な南ヨーロッパでは高級食材として珍重されています。
野趣がありながら上品な味と繊細な肉質は七面鳥をはるかに凌ぎます。

まさに名を捨てて実を取る見事な鳥です。

イタリア語では「ガッリーナ・ファラオーナ」といいます。
ファラオの鶏という意味です。

古代エジプト王であるファラオの名を冠するくらいですから、食材として最高の評価を得ているのだと思います。

もしかしたら本当にファラオはホロホロ鳥を食べていたかもしれません。

フランスでもホロホロ鳥は「食鳥の女王」として愛されています。
国内各地で飼育され、その生産量は世界一です。

たとえ飼育が難しくても美食にかける情熱はさすがフランスです。
高級レストランだけでなく家庭でも一般に料理される食材です。

家庭ではオーブンで丸ごとロティ(いわゆるロースト)にしたり、フリカッセ(いわゆる煮込み)にすることが多いようです。

ところでホロホロ鳥という和名はどうしてつけられたのでしょうか。
ホロホロと鳴くからという説がありますが、本当でしょうか。

ホロホロ鳥はキジ科に属しますが、キジ科の鳥は甲高い声で鳴くのが特徴です。
たとえばキジ科の代表的な鳥といえばニワトリです。

ご承知の通り、ニワトリは「コケコッコー」と大きな声で鳴きます。
時を告げる鳥として日本でも古代から神聖化されてきました。

また「キジも鳴かずば撃たれまい」ということわざがある通り、キジは遠くまでよく響く声で「ケーン」と鳴きます。

私は実際にホロホロ鳥が鳴くのを聞いたことがありませんが、おそらく甲高い声で鳴くのではないかと思います。

もっとも日本語には「けんもほろろ」という表現があります。
この場合の「けん」も「ほろろ」もキジの鳴き声とされています。

ですから日本人の耳には「ほろろ」と聞こえなくはないようです。
もしそうであれば、鳴き声命名説が絶対に間違いともいえません。

ちなみに「けんもほろろ」は不愛想な様子を表わしています。
「親切な申し出をけんもほろろに断る」といった使い方をします。

キジがせっかく「けん」と鳴いても人によっては「ほろろ」と聞こえることもあるということを意味しています。

さて、ホロホロ鳥という和名のもう一つの由来は江戸時代に遡ります。

ホロホロ鳥が日本に伝わったのは七面鳥とほぼ同じ時期と考えられます。
オランダの商船によって長崎にもたらされました。

そのときホロホロ鳥は「ポルポラート」と紹介されたようです。
ポルポラートはオランダ語ではなくイタリア語です。

カトリック教会の枢機卿が身につける紫色の法衣を指します。
もっと正確には「紫色の法衣をまとった」という意味の形容詞です。

ホロホロ鳥は七面鳥と同様に頭から首にかけて羽毛がありません。
顔の色は白や青ですが、首の色は黒紫です。

それが枢機卿の法衣の色に似ていると思われたのではないでしょうか。
そのためポルポラートと名づけられたと考えられます。

やがてポルポラートが転訛してホロホロ鳥になったという説が有力です。

それにしてもファラオにたとえられたり枢機卿にたとえられたり、ホロホロ鳥は何と身分の高い鳥なのでしょうか。

ちなみにオランダ語では「パレル・ホーエン」といいます。
真珠の雷鳥という意味です。

ホロホロ鳥の灰青色の羽毛にはたくさんの白い斑点があります。
それがまるで真珠を散りばめたように見えるのでしょう。

日本語でもホロホロ鳥を漢字で書くと「珠鶏」です。
発想は同じですね。


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