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400字で分かる落語「稲荷の富」

「い」の77:稲荷の富(いなりのとみ)
【粗筋】 偏屈で有名な下駄屋の市兵衛が貧乏稲荷の草むしりをしているのを見て、若い二人が声を掛ける。
「おやっさん、何してるんでっか」
「見て分からん奴は聞いても分からんわい」
「草むしりでっか」
「分かったら聞くな」
「こんな稲荷じゃご利益おまへんで。流行っている向こうでやんなはれ」
「ご利益やない。気持ちがいいから、さっぱりするからやっとるのや。お前らには分からんやろう」
 草むしりをして穴を発見すると、狐がいるならお稲荷さんもいるはずだと、きれいに掃除を終え、「さっぱりしましたやろ」と帰って行く。その夜、夢で高津の富を買えという声を聴き、家財道具を売り払って1分の金を用意してやっと富くじを買う。当たったらどうする……かみさんをもらってもいいが、今まで来なかったということは、金目当てだからやめよう。金貸しをしてもいいが、貸し倒れ、強盗が怖いからやめよう。一晩で使い切るのもいいが、あいつ無茶しよる、だけで終わってしまう……空想をめぐらして、いよいよ富の当日……張り切って出掛けたが、かすりもしない。がらんとした家に帰ると表を叩く者がいる。「誰や」「稲荷の使いです」戸を開くと狐が飛び込んで、「どや、おっさん、さっぱりしたやろ」
【成立】 桂南光が演じていた。詳細不明。上方落語にうといもので……

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