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400字で分かる落語「鶉衣」

「う」の37:鶉衣(うずらごろも)
【粗筋】 伊勢屋の娘が、浪人・曽根門太夫の飼う鶉が欲しいと騒ぎ出す。金を出せばいいだろうという態度に腹を立てた門太夫、自分が儲けようと交渉役を買って出た左官の源兵衛も、頼まれて話に来た大屋も表へ放り投げてしまう。鳶頭に交渉を頼もうとすると、「いけません、あっしは馬が苦手で……」暴れ馬を睨んだだけで大人しくさせたのを見て、門大夫を見ると馬を思い出すのだ。「お嬢さんに鶉は似合いません。猫がようがす。近所からもらってきます」と逃げてしまう。
 仕方なく番頭の彦助が出掛け。自分の生い立ちと伊勢屋への恩義を語り、母を亡くしたお嬢様の思いを叶えたいと手を突いて頼む。門大夫から「では明朝いらっしゃい」と言われて行くと、鶉を殺して鍋にしており、娘の我儘を諭す。これを聞いた娘がやっと我に返り、自ら長屋へ詫びに行った。
 さて、暴れ馬を押さえた浪人がいると耳にした中山山城守が調べさせ、鶉の一件が報告された。家臣が考え直すよう進言するが、「今そういう気骨のある者がいないのだ」と鶴の一声。門大夫が立派な身なりで挨拶に来たのを見た源兵衛が大家の家に飛び込んで、「ありゃどうしたんです」「鶉を食ったのがお殿様のお気に召したらしい」
「へえ。あっしも昨日鳩を食いましたが、出世しましょうか」
「気を付けろよ。豆鉄砲を食らうだろう」
【成立】 宇野信夫の戯曲を落語に仕立て、1965(昭和40)年12月三遊亭円生(6)がテレビで演じた。原作は門大夫が出世して伊勢屋を訪ねると娘の婚礼だったなど、舞台を意識したものだったが、円生が作者と相談の上カットし、にぎやかしの源兵衛を再登場させることにした。最初の経緯を源兵衛が伊勢屋に報告する台詞で説明するのも落語的で面白い。
【蘊蓄】 「鶉衣」はつぎはぎの着物で、浪人の象徴になっている。

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