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400字で分かる落語「医者泥」

「い」の34:医者泥(いしゃどろ)
【粗筋】 医者のところに泥棒が入り、女房に刀を突きつける。目を覚ました医者が薬箱から匙(さじ)を取り出すと、盗人、これはいかんと逃げ出した。女房がびっくりして、
「いったいどうして泥棒たちは逃げてしまったの」
「この匙でどれだけ人を殺したことか」
【成立】 安永2(1773)年『聞上手』二篇の「庸医匕(やぶいしゃのさじ)」。昭和初期の演目一覧に「医者泥」とあるのがこれだと思う。原作に沿って本文のようにしたが、逃げ出した泥棒が、「なぜ逃げたんだ」「あの医者に掛かったら命がない」というのが多いようだ。医者が自分で言うとブラックが強すぎるので、こちらの方がいいのかも。藪医者物のマクラで聞いた。
 安永5(1776)年『高笑い』の「医師」は、匙を持った医者が、「これが無ければ下手人になる」と言う。
【蘊蓄】 「さじを投げる」「さじ加減」という「さじ」は、ここで出た医者の「匙」。

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