400字で分かる落語「今戸焼」
100:今戸焼(いまどやき)
【粗筋】 亭主が戻ると家は留守。長屋中の女房がそろって芝居見物に行ったらしい。帰って来る気配がして、隣のかみさんが「遅くなったから亭主に誤らなきゃ」と言うのを、自分のかみさんが、「甘やかすと癖になる」と言うからすっかり腹を立てる。かみさんの方もまずいと思って、「お前さん、怒った顔が締まっていいよ」とおだてる。亭主は「元さんは吉右衛門、三吉は宗十郎に似ているなんて聞いている」と愚痴を言うと、
「お前さんだって、福助に似ているよ」
「役者の福助か」「今戸焼のだよ」
【成立】 「福助くらべ」とも。三笑亭可楽(8)以降演り手がない……かな。桂文治(9)は「映画女房」と題し、二枚目を並べて旦那の愚痴になり、「仏壇を拝んでるから『おっかあ、誰の命日だ』って聞いたら『佐田啓二さんの』って言ってやがる」
佐田啓二は昭和39(1964)年没。その後「お前さんだって似ているよ。渥美清」と変えていた。可楽が亭主の気持ちの浮き沈みを見事に表現していたが、文治は面白さに徹して心理描写は不足……これ私の小学生の時の感想。