400字で分かる落語「伊勢屋松阪扇怪談」
「い」の49:伊勢松坂扇屋怪談(いせまつざかおうぎやかいだん)
【粗筋】 伊勢参りの一行、どこへ行っても用心棒代わりの若侍・辰次郎だけがもてる。松阪の扇屋でも、看板娘が辰二郎にだけおまけを一本くれる。一行の丈助から貧乏侍と見て金扇、金を恵んだのだと言われ、真に受けて店に戻って扇を返そうとすると、娘の口から惚れたとは言えず、『朝顔日記』で思う人の代わりに朝顔の絵の扇を抱くという話をする。短気を恥じた辰二郎は帰る。宿で大部屋に泊まると、行き合わせた易者が、最近関わった女が横恋慕する男に殺されてあなたに取り付いていると言う。下手人も祟られて浜に迷い込んでいるというのですぐにそこへ向かうと、丈助が雷雨の中でさまよっている。
「扇屋の娘を殺したな」「知らねえ」「この顔に見覚えはないか」
闇の中に娘の顔を浮かび上がり、丈助は海に引き込まれる。
「拙者が斬るまでもなく海に引き込むとは……ても恐ろしき(チョン)執念じゃなあ」
辰二郎は扇屋で経緯を話し、養子に迎えられて大坂に進出させるほど繁盛させ、代々娘を供養した。
【成立】 桂文我が、明治23年の本から落語に仕立てた。「執念じゃなあ」で切る方が私好みかな。
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