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400字で分かる落語「田舎芝居」1

「い」の71-1:田舎芝居(いなかしばい)1
【粗筋】 田舎の祭礼で芝居をすることなり、昼は芝居で馬の足、夜は噺家として寄席に出るという、通称「馬シカ」という中村福寿を先生に頼む。田舎では大先生、『忠臣蔵』を稽古して、いよいよ上演。素人の寄せ集めだが、さすがプロの先生が舞台を引き締める。早変わりでの高師直(こうのもろのお)になったが、かぶった烏帽子(えぼし)に蜂が入っていておでこを刺される。みるみるはれ上がったのを見た客が驚いて、「さすがは江戸の役者、師直と福助の早変わりだ」
【成立】 文化4(1807)年十返舎一九作『田舎草紙』。明治期の桂文治(6)の速記は『忠臣蔵』大序から五段目まで通しで見せる大長編。上下二部に分けて、上の落ちがこれ。橘家円蔵(4)は四、五段目のみ、これが「五段目」に独立した。橘家円喬の「素人芝居」は「蛙茶番」に続けるなど、かなり自由に演じられている。福助は今戸焼頭でっかちの人形だが、ここでは役者の中村福助も連想させる。このまま「こんな馬鹿な芝居があるか」と客が騒ぎ出し、そのままその2へ続けるのが本来の型のようだ。
 上方には、大序の兜改めを生かした「兜だけやのうで、烏帽子も改めといたらよかった」という落ちがあったと書かれているが、露の五郎兵衛が本文の客の台詞の後に付けていた。

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