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400字で分かる落語「犬の目」2

「い」の86:犬の目(いぬのめ):その2
 1773(安永2)年『聞上手』の「眼玉」は「紙屑拾いを見ると、どうも吠えたくなります」という落ち。これも演じられた記録があるが、
「小便をする時片足外なければなりません」
「まだ鑑札を受けておりません」
から、
「女房とする時後ろからしなければなりません」
「糞を食いたくなります」
 まで多種多様。治療を終えたその場で、こうなるという想像で終わると、つながりはスムーズ。翌日の報告だと一拍置いてしまうが、本当に犬のようになっているというおかしみが出る。犬のような仕草か何か加えるとおかしみが増す。
 別名「目玉違い」。目玉をくりぬく音は「キュースパーキュースパー」が多いが、前の春風亭柳好は「グルグルポワッ」とやっていたと思う。三遊亭歌武蔵は「バウワウ」と音がした。珍しい林家三平(1)の録音があるそうだが聞いていない。上方でも桂米朝を聞いた。その他聞いた噺家は20人くらいは名前が出る。
 日本橋で落語相撲が行われ、桂文楽(5)の「狸の釜」と三升屋小勝(3)の「犬の目」の取り組みとなった。行事が小勝の勝利としたが、地元の文楽ファンが集まっていたからさあ大変、抗議の声で大騒ぎ……行事の入船亭扇橋(8)は少しも騒がず、「どんなに狸がうまく化けても、犬の目にはかないません」と言った。これで会場は騒ぎをおさめて大拍手。常連が扇橋に寿司を贈った。

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