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400字で分かる落語:「ある理由」

109:ある理由(あるりゆう)
【粗筋】 バーで飲み始めた男、今日は上司の告別式だが行かなかったと話し始める。上司が死ぬのは分かっていた。
「数日前、夕焼け雲が真っ赤で、そこに上司の姿が消えて行った」
「死因は何だったんです」「くも膜下出血」「なるほど」
 告別式に遅れて行ったら、みんなハンカチで目頭を押さえて肩を震わせている。そんなに愛されていたのかと思ったら、読経の時に坊主の頭で蠅が滑ったので、笑いをこらえて泣いている振りをしていたのだった。
 告別式に行かないのはある理由が……飲み会で女の子に別室に誘われて行くと暗い。ズボンを下ろして声の方に行くと、パッと灯りが点いて、皆で八ポーバースデーを歌われた、上司の好きなコスプレで祝ってくれたが、下半身丸出しで蝋燭を吹き消した。
「でも、焼き場まで見送るべきだったな。コスプレ好きだったから、火葬(仮装)には付き合わないと」
【成立】 菊池寛の『葬式に行かぬ訳』をもとに春風亭小朝が創作した。

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