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400字で分かる落語「磯の鮑」

「い」の52:磯の鮑(いそのあわび)
【粗筋】 女郎買いの先生がいると騙されて出掛けた与太郎に、手を焼いた先生、仕方なく女郎買いの手ほどきをする。吉原の歴史、牛太郎やおばさんとのやり取り、座敷に上がると、「私は前からお前を知っていて、やっとあがることが出来た。これが本当の磯の鮑の片思いだよ」と言って相手の膝をつねるというのだ。
与太郎、さっそく吉原へ行くが、相手の台詞を訂正しつつ教わった通りに実演、無事女と会うが、「鮑」が出て来ない。
「あ、そうだ、わさび、伊豆のワサビの片思いだーよッ」
「おお、痛い……そんなにつねると涙が出まさあね」
「涙が出る……今のワサビが効いたんだろう」
【成立】 柳家小せん(1)の速記では、女郎買いの心得が詳細、野暮ととられないためのマニュアルで、経験に裏打ちされているのだろう。先生の名前に古今亭志ん生(4)の本名「鶴本」。三遊亭円遊(1:鼻の、ステテコの)は「梅村」、柳亭左楽(4)は「梅村久兵衛」としている。上方では「わさび茶屋」。
 安永8(1779)年『寿々葉羅井』の「道楽指南所」は、米屋の若旦那が新菜所に来る。「米屋の息子と仰いますが、米の相場はどうなっています」「分かりません」「うむ。これは御下地がある」
 安永4年『現金安売はなし』や翌年『寿々葉羅井』の「道楽者」も同じ。「喧嘩指南」と同工異曲で、喧嘩の方がずっと面白い。

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