【第11章・報告会(前段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)
第十一章 報告会(前段)
栄は、板谷桂意の屋敷のある神田鎌倉横町から浜町に向かい、再び町駕籠に乗っていた。すでに日が暮れている。しかし、そんなことは気にもならず、桂意に言われたことを考え続けていた。
屏風見分の場で起こったことを聞いたときは、師の無念を思って怒りに我を忘れた。しかし、桂意が指摘した通り、浜町狩野家は存続の危機にある。それもかなりの崖っぷちだ。
武家にとって、家の存続は至上命題である。栄も陪臣とはいえ、侍奉公する武士の娘であり、そのことは遺伝子レベル