マガジンのカバー画像

融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

36
完結。投稿した歴史小説「融女寛好 腹切り融川の後始末」をまとめたマガジンです。前書き及び本編全35章
運営しているクリエイター

#浜町狩野家

【第35章(最終章)・融女謝師恩碑】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十五章(最終章)  融女謝師恩碑  狩野融川の切腹から二十五年が経った。  天保七年…

3

【第34章・木挽橋暮色】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十四章  木挽橋暮色  素川章信と晴川養信が呼び戻された。部屋に入ってきた二人は、床…

3

【第33章・金色の悪意(後段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十三章  金色の悪意(後段)  十九歳の女絵師と三十七歳の幕府奥絵師、役者が違うと言…

2

【第30章・一門会議】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十章  一門会議  打ち合わせが終わると長谷川たちはすぐに出て行き、座敷には栄と素川…

3

【第29章・朝】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十九章  朝  いつもと違う天井だ。でも、杉板の木目に見覚えがある。そうか。泊めてい…

4

【第27章・幕間狂言(一)扇屋の娘」融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十七章  幕間狂言(一) 扇屋の娘  江戸の朝は明け六つ(ほぼ午前六時)に始まる。各…

4

【第14章・奥様の憂鬱】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十四章  奥様の憂鬱  報告会が終わり、廊下に出た栄に、妹弟子で奥様付きの女中でもあるこまが声をかけてきた。 「お栄様、ちょっとよろしいですか」 「ええ、もちろん。何かしら?」 「その、奥様のことですが、お部屋にお戻りになるなり、私に文をしたためる準備をするようにとおっしゃいました。その、よろしいのでしょうか。奥様は少々、世事に疎いところがおありなので、勝手に文など出されては、その、何と言いましょうか」 「文を。よく知らせてくれました。でも、どうしましょう。こちらから押

【第12章・報告会(後段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十二章  報告会(後段) 「かしこまりました。ご報告いたします」  栄は歌子に改めて一…

2

【第11章・報告会(前段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十一章  報告会(前段)  栄は、板谷桂意の屋敷のある神田鎌倉横町から浜町に向かい、再…

1

【第8章・揺れる思い】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第八章  揺れる思い  栄を乗せた町駕籠が行く。  奥絵師・板谷桂意の屋敷は神田鎌倉横町…

4

【第6章・疑問】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第六章  疑問  栄が井戸端で脇差の血を洗い流していると、画塾の後輩絵師が寄ってきた。 …

4

【第4章・悲しみの行方】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第四章  悲しみの行方  両国の栄とほぼ同時刻、もう一人、浜町狩野家の使者により融川の死…

4

【第3章・栄女駆ける】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三章  栄女駆ける  昼の八つ(ほぼ午後二時)過ぎ、両国御竹蔵の東にある御家人屋敷の離…

4

【第2章・浜町狩野屋敷】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二章  浜町狩野屋敷  半時(一時間)ほど時間は戻る。  血まみれで生死も判らぬ「殿」を乗せた駕籠が、屋敷の中に吸い込まれて行った。この屋敷は、奥絵師四家のひとつ、浜町狩野家の屋敷である。  江戸時代、画壇を制覇していたのは、いわゆる狩野派である。江戸狩野とも呼ばれる。徳川家康・秀忠親子が関ヶ原の戦いに勝利し、江戸に幕府を開いたのが慶長八年(一六〇三年)。その二年後に、当時京都を中心に活動していた絵師集団・狩野派を率いていた狩野光信に対して、幕府から江戸への移転命令が下