【第14章・奥様の憂鬱】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)
第十四章 奥様の憂鬱
報告会が終わり、廊下に出た栄に、妹弟子で奥様付きの女中でもあるこまが声をかけてきた。
「お栄様、ちょっとよろしいですか」
「ええ、もちろん。何かしら?」
「その、奥様のことですが、お部屋にお戻りになるなり、私に文をしたためる準備をするようにとおっしゃいました。その、よろしいのでしょうか。奥様は少々、世事に疎いところがおありなので、勝手に文など出されては、その、何と言いましょうか」
「文を。よく知らせてくれました。でも、どうしましょう。こちらから押