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融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

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完結。投稿した歴史小説「融女寛好 腹切り融川の後始末」をまとめたマガジンです。前書き及び本編全35章
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#狩野派絵師

【第34章・木挽橋暮色】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十四章  木挽橋暮色  素川章信と晴川養信が呼び戻された。部屋に入ってきた二人は、床…

仁獅寺永雪
11か月前
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【第16章・姉弟子(後段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十六章  姉弟子(後段)  栄が大久保屋敷の近くまで来ると、門脇のくぐり戸の前で狩野新…

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【第13章・備中守の使者】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十三章  備中守の使者  しばらくすると、素川を追った家臣が一人だけで戻ってきた。 「…

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【第12章・報告会(後段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十二章  報告会(後段) 「かしこまりました。ご報告いたします」  栄は歌子に改めて一…

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【第11章・報告会(前段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十一章  報告会(前段)  栄は、板谷桂意の屋敷のある神田鎌倉横町から浜町に向かい、再…

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【第10章・目撃証言】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十章  目撃証言  食らい付いてきそうな勢いの栄に対して、板谷桂意が静かな口調で尋ねた…

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【第9章・絵画の入口】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第九章  絵画の入口  栄を乗せた町駕籠が、神田鎌倉横町の板谷桂意の屋敷前に着いたとき、七つ(ほぼ午後四時)を四半時(三十分)ほど過ぎていた。 「駕籠屋さん、帰りもお願いしたいから、こちらで待っていて下さい」  栄は、浜町狩野家の画塾に移った後も、年に数回は桂意を訪れていたから、板谷屋敷の人々も栄のことはよく知っている。来意を告げると、すんなり桂意の書斎に通された。 「どうした? 何日か前に新年の挨拶に来たばかりではないか」  板谷桂意は、名を広長という。歳は五十三。そ

【第8章・揺れる思い】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第八章  揺れる思い  栄を乗せた町駕籠が行く。  奥絵師・板谷桂意の屋敷は神田鎌倉横町…

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【第7章・蘭方医の検死】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第七章  蘭方医の検死  奥絵師・板谷桂意から情報を得るため栄を派遣すると決めたところで…

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【第6章・疑問】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第六章  疑問  栄が井戸端で脇差の血を洗い流していると、画塾の後輩絵師が寄ってきた。 …

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【第5章・阿部備中守】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第五章  阿部備中守  栄と素川章信が浜町狩野屋敷に入った八つ半(ほぼ午後三時)少し過ぎ…

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【第4章・悲しみの行方】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第四章  悲しみの行方  両国の栄とほぼ同時刻、もう一人、浜町狩野家の使者により融川の死…

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【第3章・栄女駆ける】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三章  栄女駆ける  昼の八つ(ほぼ午後二時)過ぎ、両国御竹蔵の東にある御家人屋敷の離…

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【第2章・浜町狩野屋敷】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二章  浜町狩野屋敷  半時(一時間)ほど時間は戻る。  血まみれで生死も判らぬ「殿」を乗せた駕籠が、屋敷の中に吸い込まれて行った。この屋敷は、奥絵師四家のひとつ、浜町狩野家の屋敷である。  江戸時代、画壇を制覇していたのは、いわゆる狩野派である。江戸狩野とも呼ばれる。徳川家康・秀忠親子が関ヶ原の戦いに勝利し、江戸に幕府を開いたのが慶長八年(一六〇三年)。その二年後に、当時京都を中心に活動していた絵師集団・狩野派を率いていた狩野光信に対して、幕府から江戸への移転命令が下