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融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

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完結。投稿した歴史小説「融女寛好 腹切り融川の後始末」をまとめたマガジンです。前書き及び本編全35章
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2023年8月の記事一覧

【第16章・姉弟子(後段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十六章  姉弟子(後段)  栄が大久保屋敷の近くまで来ると、門脇のくぐり戸の前で狩野新…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第15章・姉弟子(前段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十五章  姉弟子(前段)  栄は、出発前に台所脇で軽い夕食を摂った。  家老の長谷川か…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第14章・奥様の憂鬱】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十四章  奥様の憂鬱  報告会が終わり、廊下に出た栄に、妹弟子で奥様付きの女中でもある…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第13章・備中守の使者】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十三章  備中守の使者  しばらくすると、素川を追った家臣が一人だけで戻ってきた。 「…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第12章・報告会(後段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十二章  報告会(後段) 「かしこまりました。ご報告いたします」  栄は歌子に改めて一…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第11章・報告会(前段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十一章  報告会(前段)  栄は、板谷桂意の屋敷のある神田鎌倉横町から浜町に向かい、再…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第10章・目撃証言】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十章  目撃証言  食らい付いてきそうな勢いの栄に対して、板谷桂意が静かな口調で尋ねた。 「そなた、今日、お城で何が行われたか知っているのか」 「はい。公方様から朝鮮国王に贈られる屏風の最終見分でございます」 「そうだ。問題はそこで起きた」 「やはり、やはりそうだったのですか」  朝鮮通信使は、朝鮮国王が日本の最高権力者に対して派遣した外交使節である。十四世紀後半、室町幕府三代将軍・足利義満のときが最初であったとされる。江戸時代には、李氏朝鮮の王が、徳川将軍に対して朝鮮

【第9章・絵画の入口】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第九章  絵画の入口  栄を乗せた町駕籠が、神田鎌倉横町の板谷桂意の屋敷前に着いたとき、…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第8章・揺れる思い】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第八章  揺れる思い  栄を乗せた町駕籠が行く。  奥絵師・板谷桂意の屋敷は神田鎌倉横町…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第7章・蘭方医の検死】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第七章  蘭方医の検死  奥絵師・板谷桂意から情報を得るため栄を派遣すると決めたところで…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第6章・疑問】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第六章  疑問  栄が井戸端で脇差の血を洗い流していると、画塾の後輩絵師が寄ってきた。 …

仁獅寺永雪
10か月前
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【第5章・阿部備中守】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第五章  阿部備中守  栄と素川章信が浜町狩野屋敷に入った八つ半(ほぼ午後三時)少し過ぎ…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第4章・悲しみの行方】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第四章  悲しみの行方  両国の栄とほぼ同時刻、もう一人、浜町狩野家の使者により融川の死…

仁獅寺永雪
10か月前
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【第3章・栄女駆ける】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三章  栄女駆ける  昼の八つ(ほぼ午後二時)過ぎ、両国御竹蔵の東にある御家人屋敷の離れで、栄と姉の幸が、女同士でささやかなお茶会をしていると、屋敷の玄関先から大きな声が聞こえた。 「御免ください。お栄様、お栄様はいらっしゃいませんか。一大事です。殿様が、殿様が!」 「騒々しい。何事かしら」 「姉上、わたくしが出ます。わたくしを呼んでいるようですから」  栄は、座っていると気付かないが、この時代にしてはかなりの高身長である。手足もすらりと長い。色白で顔の作りも整ってい