【第10章・目撃証言】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)
第十章 目撃証言
食らい付いてきそうな勢いの栄に対して、板谷桂意が静かな口調で尋ねた。
「そなた、今日、お城で何が行われたか知っているのか」
「はい。公方様から朝鮮国王に贈られる屏風の最終見分でございます」
「そうだ。問題はそこで起きた」
「やはり、やはりそうだったのですか」
朝鮮通信使は、朝鮮国王が日本の最高権力者に対して派遣した外交使節である。十四世紀後半、室町幕府三代将軍・足利義満のときが最初であったとされる。江戸時代には、李氏朝鮮の王が、徳川将軍に対して朝鮮