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哲学的キャリア論のススメ11~なぜキャリアデザイナーはChatGPTを使うのが上手いのか?~

「働く、生きるを、HAPPYに」をビジョンに掲げる株式会社ミライフで、キャリアデザイナー兼事業企画として働いている菅野(かんの)による「哲学的キャリア論」、第11回です!

「面接は危険物以外持ち込み可」という言葉を深掘りした第10回はこちらをご覧ください!
※内容はどこから読んでも大丈夫ですのでご安心ください。

なお、このnoteでは「哲学的」という言葉をとても広い意味で使っています。

もう少しちゃんとした哲学の話が知りたいよ!という方は、Voicyで配信しているこちらの番組をお聞きいただけると嬉しいです。

それでは、さっそく始めていきましょう!


肝になるのは「言語化力」と「問いかけ力」

先日、知り合いの経営者が「うちのChatGPTが全然賢くないので、使い方を教えてほしい」という旨の投稿をFacebookでしていました。

何か力になれれば、と思い、1時間ほど時間をもらって自分の使い方をお伝えしていたのですが、途中で「なるほどなー!」とめちゃくちゃ納得いただいて

何がよくなかったか分かりました!
僕と菅野さんの違いは「言語化力」と「問いかけ力」ですね。

というフィードバックをいただきました。

そしてこのフィードバック自体が、私にとっても大きな気づきでして、

「言語化力」も「問いかけ力」も、日々の面談で磨かれてるスキルだ!

と思ったのが、今回のnoteのきっかけになりました。

「言語化力」は文脈を設定する力

例えば、この場合の「言語化力」は「文脈を想定・指定しながら具体的な状況設定を行う力」と言い換えてもよいと思います。

例えば以下のような場面。

とあるアーティストさん(以下〇〇さん)の支援をされており、今後どんなことを仕掛けたら面白いかな?という疑問に対するやり取りです。

この時単純に「〇〇さんは今度どんな活動をすべきですか?」と聞いてしまうと、「たしかにそうだけど、あんまり〇〇さんっぽく無いね」といった回答になることが多いです。

そこで、「どんな活動をすべき」に「まったく新しい音楽シーンを切り開く」という方向性をつけてあげ、さらに「〇〇さんになりきって」と、観点も指定してあげました。

こうすることで、「誰の観点(「なりきって」)から見たときに、どんな方向性(「新しい音楽シーン」)がありうるのか?」という風に、答えが返ってきた際にもその内容が受け取りやすいような文脈を設定しています。

実際、いくつか返ってきたなかには「健康とウェルビーイングをテーマにした音楽による心身の癒しと健康促進」といった内容があり、「これは面白いかもしれないね」と好評でした。

そして実はこれ、面談のときに行っている思考の整理と同じです。

面談の場合、常に重要なのは目の前にいるカスタマー本人(観点)にとって、どの未来(方向性)がフィットするのか?を明らかにすることです。

一般論としての市場価値や転職市場の状況は、それをよりクリアにするために必要な追加情報でしかありません

だからこそ、面談においても

・どんな場面で、喜びや辛さを感じたのか
・どんな人といるときに楽しいと思うのか
・3年後と10年後で、それぞれなりたい姿はあるか

など、状況を設定することで、まだ見えていないものをいっしょに「言語化」することが、とても重要です。

そして、この日々行っている「文脈を想定・指定しながら具体的な状況設定を行う力」=「言語化力」が、上記のようにChatGPTからより望ましい回答を引き出すことにも役立っているのです。

「問いかけ力」は相手の言葉を引き出す力

続いて「問いかけ力」ですが、こちらは「言語化したものを別の観点から眺める力」と言い換えてもよいかもしれません。

実際、ChatGPTの例でいきますと、知人の方はこんな風に仰いました。

菅野さんは「言語化力」がすごいからうまく使えるのが分かったけど、僕が使いこなすには時間がかかりそうだねえ・・・。

この言葉は危険信号で、このままだと知人はまったくChatGPTを使えるようにならず、私は「ChatGPT、俺は使えるけど」をみせびらかしただけの、嫌なやつになってしまいます笑

そこで、こんな風にお伝えしました。

実は、言語化が難しくても、適当に質問をし続けることでいい回答が返ってくることもあるんですよ

そして実際に行ったのが、こんなやり取りです。

哲学に寄せてくれてるのは嬉しいんだけど

はい、全然つまらないですね!

これ、私の方では一切文脈や背景を指定せず、ただ反射的に「面白いこと言ってよ」「全然つまんないんだけど」と伝えているだけです。

これを、私が参加したChatGPT講座の先生は「めっちゃいじわるな上司になる」といった言葉で表現していました。

つまり、ChatGPTには良くも悪くも感情がないので、人間相手だったら「こんなこと言ったら悪いよね・・・」と思うような反応や返答でも、何回でもやっちゃってOK!なのです。

そこから、こんな風にやり取りが変化していきます。

月が夜型とは・・・?

さて、ここでも内容にはまったく触れていませんが、何となく感じた「家族が出てくるのはいい」という感情をそのまま伝えています。

これ、いわゆる「~ですか?」という「疑問としての問いかけ」ではないのですが、相手のアクションをそのまま使ってリアクションを返しているという意味では、「受け止めの問いかけ」の形になっています。(いわゆるオウム返しというやつ)

さて、その後何度かやり取りをしたところ、

まったくジョークではないのですが、心温まるストーリーができてなんだかほっこりしました・・・というところで、合計4回の問いかけが行われました。

(もし笑えるものが欲しければ「このお話にちゃんとオチをつけて(方向づけ)、5歳の子どもでも(観点)笑えるようにして」と伝えれば、言語化にもなりますね。)

この間、私がやっていたのは、ChatGPTの提案から感じたことをそのまま伝えていただけです。

ですがこの「感じたことをそのまま伝える」というのも、実は面談でも結構大事なコミュニケーションだったりします。

というのも、人は喋っている間、「ちゃんと説明せねば」とか「一貫性があるように伝えねば」といった風に、ある種コミュニケーションのモードを設定してしまっているので、そのモードに沿ったことにしか注意が向かなかったりするのです。

もう少し具体でいうと、例えば「私は給与をあげたいんです」と仰っている方がいて、なんだか自分に言い聞かせるような印象を感じたとします。

その際に「給与をあげたいんですねえ。でも、なんだかちょっと無理をして自分に言い聞かせている感じが僕にはしました」と伝えたとします。

そうすると、「・・・実は、給与が下がって自分の存在が否定された気がしたんです」と、その背後にあった「存在が否定された感じ」を教えてくれたりします。

つまりこの方の本当の願いは「給与をあげたい」ではなく「自分の存在が認められる、あるいは否定されたと感じないような過ごし方をしたい」だった・・・といったことが、往々にしてあるのです。

これ、面談をしていてとても面白いと思うことなのですが、ここで先ほどの「言語化」を使って「給与をあげたいというのは、実は自分の存在感を守りたい裏返しではないですか?」など、よかれと思って言葉にした場合、「いえ、そんなことはないです」と否定される場合が結構あります。

もしかすると「自分はそんな弱い人間ではない」といった思想の壁にさえぎられてしまうのかな、と思うのですが、いずれにせよ「言語化」が常に役立つとは(特にセンシティブなテーマにおいては)限りません

そういったときこそ、「問いかけ」を行うことで相手の言葉を引き出してあげる。

それが、ChatGPTに対しては感情に配慮せずできるので、気を遣わず、とにかくドンドン思ったことを投げかければOK!ということになるわけです。

ちなみに、こうした「言葉を投げかける」ことを、大ベテランのキャリアデザイナーが「相手の心の湖に小石を落として、浮き上がってきた砂を掬い取らせていただく」といった表現をしていました。

いまでも美しい表現だなあ、と思います。

「具体と抽象を行き来する」で終わらせない!

さて、この「言語化力」と「問いかけ力」。

ピンと来た方は「言語化力が具体化する力」で、「問いかけ力が抽象化する力」なのかな?と感じたのではないかな、と思います。

それはその通りで、まさに「具体と抽象を行き来する」なのですが、ここでもう1つ大事なことがあります。

それは、「自分の感情を置き去りにしない」ということ。

これは面談でも、ChatGPTとのやり取りでも同じなのですが、何らかのやり取りにおいて、基本的には「自分の感情」というものが、必ずついて回ります。(仕事柄「感情を押し殺す」ことが大事なやり取りもあるとは思います。)

例えば面談においても「この人と話していると楽しいなあ」と思うことは多いですし、逆にChatGPTとやり取りしていて「こんな回答つまらんわ!」と思うこともあります。

その際に「あなたとお話しているとこちらも楽しくなるんです」や「この回答はつまらないのでもっと面白くして」と伝えることは、それぞれのシーンで非常に役立ちます。

ともすると、僕らは「感情を直接的に伝えるのは失礼だ」という思い込みがあり、あまり感情を言葉で表現しようとしません。

たしかに、あまりにもネガティブな感情をぶつけたり、感情ばかりを投げかけられるのも(子どもとのやり取りを想像するとイメージしやすいと思いますが)疲れてしまいます。

ですが、相手へのリスペクトと「あくまで私が感じたことですよ」というスタンスを大事にできれば、感情を伝えることはお互いの心の距離を、ただ言葉を使う以上にぐっと近づけてくれる、と感じています。

もちろん、ChatGPTには心がないので、ChatGPTに対しては上記の感覚は幻想なのですが、それでも冒頭にご紹介した知人は

いやー、なんだかChatGPTと仲良くなれた気がしたよ!

と、まさに「親しみ」を感じていたのでした。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回は「なぜキャリアデザイナーはChatGPTを上手く使えるのか」という切り口から、「言語化力」と「問いかけ力」について考えてみました。

日頃キャリアデザイナーとして行っていること、意識していることがChatGPTとのやり取りでも役立っている、というのは、私としても新しい気づきでした。

何より、「全然別だと思っていたものが実はつながっていた」という発見自体が、わくわくを刺激しますね!

そして、実はこの度、ミライフにてAI面談というサービスをリリースしております。

私と一緒にChatGPTを使ってキャリアの深堀を行おう!というもの(無料)ですので、ご興味あればぜひこちらのフォームからお申込みください。

なお、いつもの転職相談をお願いしたい、という場合はぜひ気軽に、下のフォームからご連絡いただけたら嬉しいです。

それでは次回も、どうぞよろしくお願いいたします!


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