創作童話「無料ゲームアプリ売りの少女」
年の瀬も迫った大晦日。
一人の少女が寒空の下、スマホ向け無料ゲームアプリを売っていました。
アプリが売れないと個人ゲーム開発者の父親がセミリタイアして悠々自適な生活を送れないので家に帰れません。
しかしゲームアプリが大量に溢れている街では誰も少女のアプリになど気にも留めず、目の前を通り過ぎていくのでした。
そこで少女は広告を打つことにしました。広告であれば普段ゲームをやらない層にリーチする事ができます。なのでその内容は誰でも興味を持ってくれそうなものにし、簡単に遊べる事をアピールしたのです。
するとどうでしょう。みるみるDL数が増えていくではありませんか。
少女はさらにその効果を高める事にします。1インストール単価の高い日本や北米、欧州での広告配信を避け、インドや南米あたりを中心に配信しました。そうする事でCPIを約2~3円くらいまで下げる事が出来たのです。
(※CPIとは1インストールあたりにかかる費用の事)
こうしてその日のDL数は過去最高にまで達し、少女はほくほく顔で家に帰りました。
しかし、そこで少女が目にしたのはPCの前で固まっている父親の姿でした。
どうした事かとモニタをのぞき込むと、そこにはAdmobとGoodle広告のトップ画面が映し出されており、膨大な広告出稿費用とは裏腹にすずめの涙ほどしかない収益が表示されていたのです。
いったいどうしてそんな事に!と慌てた少女は固まっている父親をどけてFirebaseアナリティクスのページを開き、アプリの解析結果を表示しました。
それを見た少女は驚愕します。
なぜならその結果は、広告で得たユーザの大半がすぐに離脱してしまうという事実を示していたからです。インドや南米はおろか、日本、米国、欧州などすべての地域のユーザがそうでした。
つまり広告で得たユーザーは売上になんら貢献していなかったのです。
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外を見ると流れ星が一つ、流れました。
「それは誰かの命が消えようとしている象徴なんだよ」
少女はそんな誰かの言葉を思い出し、一筋の涙をこぼしたのでした。
~完~
■解説
広告で得たユーザの大半はアプリを2~3分起動しただけで離脱してしまい、アプリの売上に貢献する事はほぼありません。
Twitterやゲーム紹介ブログ、ストアからの自然流入の場合はそういった事がないので、これは普段ゲームをやる層とやらない層による違いだと思われます。広告で得るユーザは普段ゲームをしない層な訳ですから、そこをちゃんと踏まえないと痛い目をみます。
いやいや、それなら広告を打つ意味はなくね?
…と思われるかもしれませんが、広告によって売上を出している企業がたくさんあるのも事実です。
それはおそらく広告で得たユーザ自体に売上を期待しているのではなく、DL数を増やす事でストアやランキングサイトでの上位を目指しているのではないかと思われます。
そうする事で自然流入してくる優良なユーザも増え、売上も増える…といった算段です。
という事でゲームアプリの場合、中途半端に広告を打ってもランキングはほとんど変わらないのでやるならとことんやらないと効果はなさそう…というのが今回私の出した結論となります。
※なお、この童話は実話を元にしたフィクションです。
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