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特攻~傾く太陽~

まるでこの世の終わりかというような叫びが唐突に起こった。女がのどを絞められ、その直後に解放されたかのような声をあげる蝉。儚い生命の終わりを告げる断末魔のようだった。蒸し暑い夕方の空に夏を惜しむような鳴き声が響き渡り、その音色が孤独をさらに濃くしていく。この時期が来ると必ず脳裏に浮かぶ出来事がある。第二次世界大戦下、任務として爆弾を自機に抱えて、敵艦船に体当たり攻撃をした者たちがいた。ひとたび飛び立てば生還はない。彼らは「神風特別攻撃隊」と呼ばれていた。

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