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「ゴジラ-1.0」の感想

ネタバレがあるのでまだ見ていない方はご注意ください。



アマゾンプライムで公開されていたので家のPCで観てみた。
結論から言うと非常に秀逸な作品だと思った。面白かった。
脚本、演技、映像、効果音などどれをとっても高いクオリティでまとまっていた。

個人的に一番すごいと思ったのはゴジラが暴れて発生する細かい波しぶきと船の煙突から出る黒煙、あとクレーンのワイヤーが軋む音。

今作ではゴジラとの対決は海上で行われ、船の揺れ、暴れるゴジラ、周回する航空機など、地上での戦いに比べて三次元的な映像だった。
おそらくセットではなくCGを駆使して作り出しているので、水しぶきや船の揺れだけでなかなかのデータ量だろうなと思った。

あと、登場する船が「雪風」という非常に自分的には好きな船だった。
この船のチョイスからも脚本の思想がうかがえる気がした。
雪風は幸運艦と呼ばれており、戦時中何度も戦闘に参加し損傷するも戦後も生き延びた駆逐艦である。
戦艦大和が米軍の航空機に沈められた坊ノ岬沖海戦にも雪風は参加しているが生き残っている。

そういう船が登場した時点で「絶対沈まないだろうなと」もはや若干のネタバレ感が早々に起き、割と平和に観れた。
長門という素晴らしいフォルムの戦艦も戦後には残っていたはずだが、戦艦よりはるかに小さく地味な駆逐艦で戦う方向に脚本を作り、そして雪風を登場させる。非常にアツい展開である。雪風を令和の時代に圧巻のCGで見れるなんて幸福である。

雪風の立てる波しぶきやもくもくとした黒煙の質感などが非常に凝っている。得体の知れないゴジラが吐くブルーの光に比べて、非常にアナログな煙でこんなんで勝てるんかよ。と良い意味で絶望感を与えてくれる。
船体も細長く、波に揺れる心もとない感じが良い。

雪風(今更だけど名前カッコいい)がいるから沈まないだろう。という予測は見終わってみれば現実となり「生き残る道を選ぶ」という脚本のメッセージのようにも読み取れた。

また、主人公はゼロ戦のパイロットで戦時中に嘘の故障で飛行場に着陸し、特攻から逃げたことを戦後も引きずっていた。つまり、自分は「特攻で死ななければならなかったのではないか」という問いを抱えているように見えた。

ゴジラとの決戦では船以外に、主人公が乗る紫電(名前カッコ良過ぎ)も登場し、主人公はゴジラに特攻しとどめを刺すすることで罪を償う、自分の中の戦争を追わらせようとしているように見えた。
観ていて、あぁやっぱり雪風は残るけど紫電は特攻しちゃうのかなと思っていたし、実際にゴジラの頭に紫電が激突した瞬間はパイロットもろとも爆散したかと思ったが、なんと脱出装置が新たに取り付けられており、寸前に脱出していた。
いや、かなり感動した。
「生きる道を選ぶ」という、戦時中の日本軍と真逆の思想である。
よく言ってくれたというか、2024年ならではの良さが現れていると感じた。

シン・ゴジラを撮った庵野秀明もおろさく今作を観たと思うが、多分雪風が登場して喜んでいると思う。

雪風のクレーンのワイヤーが軋む音、ピリピリしていて、ちぎれそうな緊張感がすごかった。実際のワイヤーがどんな音なのか聞いたこともないけど、ものすごく良い演出だったと思う。

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