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声劇台本(2作品目)

今回は朗読っぽいのをつくってみました。自作発言はダメですが、常識の範囲内で自由にお使いください。

タイトル   とある小さな石のお話

登場人物  私、蝶、店長、蛍


この世界では色が濃い宝石ほど重宝され、名前が決まりやすく、職業にも困らない。しかし、私の色は、濁りが多く、色数も多いため、幼少期はひどい仕打ちをうけたものだった。親のいない私は孤児院で虐められ、未来永劫名無しやろうと貶され、誰にも必要とされなかった。生まれてから500万年が経ち、ついに名前が決まる日が来た。正直何者にもなれないだようと微塵も期待していなかった。案の定、判定不能の結果がでた。その途端周りの学生たちは、私を哀れむもの、貶すもの、虫が飛ぶような小さな声で噂をするものがいた...私はこの世界に受け入れられて居ないのだと知った。その後私は学校から飛び出し、誰もいない遠くへ、遠くへと走りに走った…誰にも受け入れられないのならばいっそ誰もいない所へ連れてって欲しいと願った
走った先に、小さな森があった。見たこともないような幻想的な蝶がひらひらと宙を舞い
私に話しかけてきた。
「ようこそ、誰も知らない森へ、うふふ」
まるで私を歓迎しているような口調で話しかけてきた。
「随分と服が汚れているわね、早くこっちへいらして」
導かれるようについて行くと、そこにはガラス窓で覆われた小さな家があった
「ここは?」
私が問うと、
「小さな喫茶店よ、店長がいるから早く入ってちょうだい」
見えない何者かに背中を押され、店に入る。
「いらっしゃい、よくここまで来てくれたわね。さあ、早く中に入って」
白く透き通った透明とも言えそうな綺麗な髪をした女の人が私に話しかけてきた、まるでこの世の者とはとうてい思えなかった。
「失礼します。」
私は中に入り、当たりを見渡すととても美しい光景が拡がっていた。見たこともない植物、どこの国から取り寄せたか分からないがとてもオシャレなティーセットが並ぶ棚、窓の奥に見えるバラのアーチがある庭。この光景にとても心を奪われた。
そのあと、その喫茶店のシャワー室を借り、服も貸してもらった。さらに、お茶を飲んでいかない?と誘われ、窓側の席に座った。
ティーカップに紅茶が注がれ、店長がゆっくりと私の向かいに座った。
「何を探しているの?」
店長は私の考えていることがわかるように質問をしてきた。
「名前...です、私この歳にもなって名前が無いんです。」
バカにされるかもしれないと私は恐る恐る答えた。
「名前...ねぇ、分かったわ。あなたの名前見つけましょう。」
「名前なんて天から貰うものなのに見つけられるんですか!」
私はびっくりして急いで立ち上がった。
「あ、すいません...」
「大丈夫よ、ここは探し物を必ず見つけられる喫茶店といわれているの」
「そうなんですか?」
「ええ、私も詳しくは分からないんだけど、昔からずっとそうなの」
店長は優しく微笑んだ。
店長と長い間これまでの話をしていたら、時間が経ち、青かった空が、段々オレンジ色に染まり、紫になっていった。
辺りが暗くなった。
「これは何...?すごく暗いけど」
「あぁ、今日は一年に一度の夜が来る日ね、星が綺麗だわ」
「夜...?そんなもの初めて聞いたよ。」
「古い文献によると、昔、この惑星は毎日夜が来ていたらしいわ、でも、ある日神様がお怒りになって宇宙の法則を変えちゃったのよ」
「そうなの...?私が走ってくる前はこんなにくらいことは無かったし、神様はどうして怒ったんだろう...」
「ところで、あなた、髪の毛がすごく光っているわね」
「え...?」
「自分の髪の毛を見てみなさいよ」
「わぁ...ほんとだ、どうしてだろう...?」
「とっても綺麗だわ、1本欲しいくらい、外に出てもっと見てみましょうか。」
私たちは外に出た。森の中に沢山の光が集まり、それは少しづつ動いたりしていた。
「どうして光がこんなに...?」
「これは、蛍っていう虫の光よ」
「蛍...?初めて聞いた名前」
「もしかして...あなたの髪の光も蛍と同じなんじゃないかしら」
「ほんとだ......」
蛍の淡い光を見ているとどこか懐かしい気がした...なぜだろう、この景色、見たことないはずなのに知っている気がする
蛍の光をぼーっと眺めていると、誰かが呼んでいる気がした
「見つけた!やっと帰ってきてくれたんだね」
「え?誰の声?」
「蛍の声のようね、あなたを呼んでいるわ、なるほど、そういうことだったのね」
「そういうことってどういうことですか?」
「早くこっちに来てよ!フローライト!」
「そう、あなたの名前はフローライトよ」
「フロー...ライト...これが私の名前...!」
この名前...なんだろう、すごく自分の中にスっと入ってくる、不思議な感覚...
「あなたは本当は今までいた世界とは違うところからきたのよ、だから今までわからなかったのね」
「私...この世界の者じゃないんですか...!」
「ええ、夜が来た途端、あなたの名前が判明したから、あなたは本来いた惑星に帰るべきよ」
「でも私、宝石ですよ!」
「そうね、でも自ら光る宝石はこことは違う惑星にいるの、光の惑星ってところよ」
「そうだったんですね、じゃあ私はどうしてここに...」
「あなたはさっき言ってた神の怒りの影響を受けてここに運悪くとばされてしまったのよ、産まれたばかりのときだったからそりゃ覚えてないわけね」
「神の怒り...どうして」
「それはまたの機会にしましょう、ここにまた来るためには探し物をまた持ってきてもらわなきゃ」
「またあなたにお会いしたいです...!必ず!」
「えぇ、また来てちょうだいね、またのご来店お待ちしております」
店長に別れを告げた途端その喫茶店はなくなり、ただの森に戻った、ただ、来る前と違うのは、私の周りに沢山の蛍が飛んでいる事だ
蛍の光が私の頭上に輪を作って飛び、私は空に旅立った。私のやっと見つけた居場所。早く帰ってどんなところか見るのが楽しみだな。そんな期待を胸に、銀河の夜空をかけていった。

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