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雨のち晴れ〜第四章〜

我が子たちを手元に取り戻す為に、飛行機に乗り向かった。
約束の場所へ向かうと、3人の我が子と姉がいた。
私の姿を見るなり、下の2人は『おかーさーーーん!』と笑顔で走り寄ってきた。
『お待たせ!』と、めいっぱい抱き締めた。
姉は『みんな ずーっと お迎え待ってたんだよねー。ホントよかったー』と ニコニコと話しかけてきた。
下の2人に まとわりつかれ、揉みくちゃにされてる私の前に長男が立っていた。
『おいで?』と両手を広げると、ススッと寄ってきて 私の両手の間に おさまった。
そして、顔をあげて 一生懸命こう話してきた。
『おかーさん、あのね…大人が1人になっちゃったでしょ?おれね、まだ卵かけご飯しか作れないから…おかーさん たいへんだよね。おかーさんはさ、大丈夫!大丈夫!って いつも言うけど…たいへんだよね。おれ、もう少し何でも出来るようになる。それまで…もう少しだけ こっちにいる…。おれのタイミングまで まってほしい…』
まだ こんな小さな子が、こんな風に考えて
こんな風に自分の気持ちを伝えてきたことに、
驚きと申し訳なさが込み上げてきた。

後に長男から聞いたが、姉が毎日の様に
『あんたたちがいたら おかーさん大変で死んじゃうかもよ!』などと言って脅していたらしい。
長男は少しでも私が楽になるようにと、幼いながらも必死で考えて出した答えだったのだ。

そんな事を知る由もない私は、
『おかーさんは、本当に大丈夫!今すぐ家族で暮らしたい。でも、あんたが そうしたいっていうのなら、あんたのタイミングで いつでも帰っておいでね?あんたの おかーさんは、おかーさんだけだよ。あんた達は おかーさんの宝物だよ』と話した。
目に涙を溜めて、長男は頷いた。

長男は、半年間 姉夫婦と暮らした。
その間の事を聞いても『自分でも ビックリするけど ほとんど覚えてないんだよね。学校は行ってたけど、それ以外で どう過ごしてたか全く覚えてない。』と話す。
周りでみていた ご近所の方に、話を聞いたら
姉は毎日のように私の長男に『言うこと聞かなかったら、この家に居られないんだよ!この家を追い出されたら あんたは住む場所ないからね!!』と怒鳴りつけられていたとの事だった。
長男は、毎朝6時には外に出て ただひたすら
縄跳びをしていたとも聞いた。
辛い経験に蓋をしてしまった長男に、謝っても謝りきれない思いだ。

人が亡くなると、お金を無心してくる人がいる…と小耳には挟んだことがあったが、まさか現実になるとは思わなかった。
主人の親族からの お金の無心。
これから母1人で子供3人を養っていかなければならない状況なのに、何かに取り憑かれたように お金をせびってくる。
私は、色々あり過ぎて疲れてしまい お金を渡せば静かになるならと相手の希望通りの額、私たち家族が 1年間ゆったり生活出来るのと同等の額を渡した。
後悔がない訳ではないが、手切れ金と思っている。

保険金目当てに私と子供に近付いてきた男もいた。
私よりも かなり若い、定職につかず不平不満の塊のモラハラ・マザコン男だ。
くだらな過ぎて、あまり詳しくは覚えていないが、主人を亡くした私の傷だらけの心に塩を山盛り擦り込む人間だった。
『おまえの旦那なんてクソだ!死んで当然だ!おまえの子供たちもクソだ!』
『おまえは母親失格だな!生きてる価値ねーよ、死ねば?』
1人だけデザートを食べてる その男に対し長女が 美味しそう…と言ったら
『は?てめー、いやしいな。母親の躾がなってねーんじゃねーの?』などと攻撃的かと思いきや、ギャンブルで大負けすると
『おれなんて…生きてる価値ないよね…
おれがいたら周りを不幸にする…』と泣き出す。
『死にたい…』とタバコの火を自分の腕や足に押し付ける、包丁を持ち出し自分の腹に当てる。
そういう事の相手をするのが疲れて、私は
お金を渡していた。
そうするとその男の機嫌がなおる。
でも、その人との生活は私の精神状態を悪くさせる一方だった。
生きてることがツラく、亡くなった主人が羨ましくて羨ましくて、正常な判断が出来なくなりかけていた。
そんな時、子供たちは何も言わずに そっと寄ってきて私を抱き締めてくれていた。
本当に何も言わずに。
子供たちの親は私しかいない、こんなに大切な宝物がそばに居てくれてるのに私は何をしていたんだろうと気付いてからの行動は早かった。
直ぐに全ての連絡手段をブロックした。
幸いにも、それに気付く1年前に ギャンブル・浮気三昧で1円たりとも生活費を入れない、泣き落としで お金を要求してくる、子育てや生活リズムを全て牛耳るその人との生活は苦しく、同棲は解消し遠くに引っ越していた事が救いだった。
何ヶ月もの間、非通知で何度も何度も電話がかかってきていたが、目が覚めていた私は その着信に何の感情も湧いてこなかった。

今、私たち家族は 完全に家族のみで生活をしている。
近くに住む実母とも完全に連絡を絶った。
実母の内縁の夫は私の長女がキライだ。
女の子で口が立つから、うるさがる。
そして口で負けそうになると、手をあげる。
実母は、それを止めず その男の肩を持つ。
私が居ない時に それがあったので、私は
《ばあちゃん、孫より その人が大事なの?》と聞いた。すると
『あんたは、私と自分の子供たちに何かあったら私を切り捨てるでしょ!私は1人になりたくない!だから この人(内縁の夫)と一緒いる!』と いかにも実母が言いそうな事を期待を裏切らずに言ってのけたのだ。
子供たちは、元々自分たちの祖母や内縁の夫の事がキライだったのもあり、二度と会わなくていいよと話すと大喜びした。
姉は統合失調症の症状が更に悪化し、妄想の中で生きている。
職場の年下のアル男に《私は家族の中で虐げられてる》《旦那も私の事を愛してくれていない》などと言いくるめ、駆け落ちした。
風の噂で、その男と昼間から酒を飲み、数々のお店を出禁になっていると聞いた。
それでも嘘で塗り固めたプロフィールを振りかざし仕事をしているようだ。

今現在、生活は かなり苦しく余裕はない。
でも心はとても豊かで穏やかだ。
3人の子供たちは、社会に出るには援助が必要だが、私は ずっとずっとそばにいる。
二度と 子供たちから離れない。
もちろん、自立する子供たちを止めることはせず全力で応援するが、いつでも戻ってこれる場所であり続ける。

私の人生は土砂降りだった。
でもやまない雨はない。
何があっても、家族が笑顔なら楽勝。
書ききれなかった事も山ほどあるが、
これで私の吐き出しは 終わり。

最後に私の好きな言葉を…
《立ちはだかる壁を乗り越えると、それは
自分を守る盾となる》

ご拝読ありがとうございました。

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