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かご島インターン in 甑島を終えて

去年のいつか「私が島でやりたいことはまさにこれだ!」と感じた甑島のisland companyの3泊4日のインターンに参加した。

正直3泊4日では、表面のふわっとしたことしか知れないだろうと思っていたが、本当に濃い時間となった。

一日の終わりに焚き火を囲んで


ないものではなく、ここにあるもの

island companyの代表 山下賢太さんが何度も言っていたこと。
これがただの理想ではなく、事業として本当に徹底されている。

すぐに結果が出る分かりやすくて安直な事業はつくらない。
そんなファーストインプレッション。

賢太さんをはじめとするisland companyが15年かけて作り上げてきたものがここにあって、これからも未来により繋がれていく。そんなものがそんな1年や2年で出来上がるわけがないということをつくづくと感じさせられた。
私が5歳の時からまちに向き合っているこの人と、ここ2.3年でまちづくりをやりたいと思い始めた私とではそれは考えられることもできるアウトプットも月とスッポンほど違う。

まちは何十年何百年かけて作り上げられてきたもの。
そこに自分が関わり、動かしていくには、それだけの時間と覚悟と誠実さが必要で、自分にはそれが圧倒的に足りていないと感じた。

どこかでまだ、活躍している同世代を見て焦りを感じ、早く結果を出すこと、形にすることに囚われて、結果中身のない事業を作ろうとしていた私。
動くことはもちろん大事だが、土台や思考のない行動は軽くて脆くてはかない。
まちに土足で踏み込み、リゾート施設を建設する外部企業と変わらない。

“あるものを生かし、その価値を高めること”は、一見懐古主義的に過去に囚われ、前に進んでいないことにも見られる中、「いえ、そうじゃないんです!」と他人を納得させられるくらいその価値を私は言語化できてないし、自分の中に落とし込むことができていない。

island companyの事業を知って、その考えに共感しつつも、じゃあなぜそれがいいのかまだまだ探究中。
もっともっと自分の哲学や思考を深めていきたい。


“あるもの”に気づき、その価値を認識するには

自分が当たり前に暮らしているまちにある価値を認識することは難しい。
だって当たり前だから。私は島を出て=外の世界を知って、やっと中島の魅力に気づくことができた。

今回、そのまちにある価値をどう発見し、認識し、事業として落とし込んでいるのか、そのメソッドを知りたくてインターンに参加した。

island companyの事業紹介を聞いて、心から感動し、尊敬する一方で、どんなプロセスを経てこれが出来上がるのか、どうしたらこんな考えや言葉が出てくるのか不思議でたまらなかった。

賢太さんからの事業紹介


今回学んだその1つの方法として

まちを分解して、要素に分けて考える

これは他の物事にも通ずると思う。全体の大枠だけで考えるとそこから出てくるものの解像度や密度は低い。

だからこそ、そもそもスタートのレイヤーを下げることが必要。
まちを構成する要素は、例えば「食べ物」「家」「政治」「祭り」など…
このように分解して考えることで、見えてくるものの解像度が上がる。

当たり前のことと言えば当たり前だが、私は自然にこの考え方が出来ていなかった。この思考の丁寧さが事業の深さに繋がっているのだと思う。


これにプラスして実践したいことがもうひとつ。

それは『近隣住区論』
半径400m圏内が、ちょうど人が歩ける、歩きたくなる範囲という理論。

観光地を一切巡らないしまなびガイド

だからisland companyは、甑島で400m圏内で自分の暮らしたい村をそれぞれつくり、ネットワーク化する。

「まちを分解して要素に分けて考える」という考え方と重なる部分があるが、まちをどのくらいの規模で考えるか。

市町村レベル、集落レベルさまざまあるが、私の場合は「中島」という単位で考えていた。
しかし、そこで陥っていたのが、中島と言っても10近くの地区があり、島内での移動が必要なため、どうしても事業やインパクトが分散してしまう。

だからこそ、もっと規模を小さく考えて400m圏内で完結するようにデザインする。そうすることで、そこに関わる人やリソース・情報がぐっと減り、密度が高まる。もっとその1つ1つに向き合うことができる。

島を、まちを、日本を、世界を、主語が大きくなればなるほど響きはいいし、カッコよくなるが、その実感と手触り感と与えられるインパクトの精度はどんどん小さくなる。

私は最初、世界をよりよくしたいと国際協力に関心を持った。そこから、技能実習生の問題を解決したいと日本に焦点を当て、中島の活性化に関わりたいと島に焦点を当て、少しずつ主語を小さくし、act locallyを実践してきたつもりだったが、まだまだだった。

400m圏内の、自分の生まれ育った宇和間という地区にまで絞り、まずはこの地区に焦点をあててまちづくりを考えようと思う。

中島の中でも、地区によって雰囲気や特徴が全然違う。
その地区の風土や文化を紐解き、もっともっと暮らしや地域に寄り添った事業を考えたい。


今回は島守という空き家再生の事業へのインターンだったので、島守が所有する空き家の一つの活用について考えるというミッションが与えられた。

橋口邸

初代村長さんの家というとても由緒ある家が題材で、実際にその家を片付けながら、リノベーションのアイデアを考えた。
片づけをしていると、壁にかかった村民憲章、塀の中からの手紙、たくさんの引き出物などが見つかり、それらからこの家に住んでいた人の暮らしや価値観が垣間見えてきた。捨てられる不要なものではない。全てこの家の暮らしや歴史を教えてくれるもの。

単に空き家をリノベーションするのではなく、元々住んでいた人の背景や文脈、歴史、周辺のエリア特徴を紐解いて、未来に繋げる。

そのために、親戚に話を聞き、残されている書物を読み、家柄を調べる。
そこには時間も労力もかかるが、そうやって家の声を聴いて出来上がった家は生きている。形あるものは永遠ではないが、そこに息づいている歴史や文脈は形が無くなろうと生き続ける。

こうやって空き家再生を考えたことは今までなかったので、そこにある価値や文脈を紐解き、それを自分なりに再構築するプロセスが非常に難しかった。

村長の家にはどんな意味があるのか、現代における村長とは。
そんなヒントを与えられながら、こんなに頭を使ったのは久しぶりというくらい必死に考えた。

この会社の事業の作り方やフィロソフィーを知りたいと思っていたからこそ、自分も全力でこの家や課題に取り組みたいと思った。

最後にプレゼンをしたリノベーションアイデア

完全に納得するものはできなかったが、小さくも形にすること・やり切る経験を久しぶりにして、間違いなく自分の財産になった。


鹿児島の離島での新しい組織の在り方


island companyに魅かれたもう一つの理由は組織の在り方

island companyでは、19つの拠点に対してメンバーは15人。
つまり、1人が1つ以上の事業を担当している。

インターン3日目で1つの事業を任されたという方もいた。
私の組織のイメージは数年先輩のもとで学び、そのあと独り立ちするという形だったので、1人1事業の組織の在り方がとても新鮮で魅力的に見えた。

私は自分で主導権を持って物事に取り組みたい性分なので、会社に入って言われたことをやる仕事には耐えられないなと思っていた。

island companyではそのような組織形態なので、1人1人の熱意や責任感、主体性が圧倒的に高いと感じた。1人1人が事業家として、その事業に向き合い、想いを持って、どうすればよりよくなるか考えながら仕事をしていた。
仕事を“こなしている”のではなく、仕事を“つくっている”という印象。

そんな1人1人がお互い連携しながら、刺激し合いながら1つの会社ができている形がかっこいいなと思ったし、新しい組織の形を垣間見た。

そしてそれが鹿児島県の離島で実践されているということに、よりワクワクと未来を感じた。

恐らくその裏にはメンバー1人1人の能力の高さや即戦力であるという前提があり、誰もがどの会社もができる体制ではないだろうなと思いつつ、私もそんな組織づくりをしたい。

小さかれど15人の組織を束ねている者として、そうやってメンバーに一事業を任すこと、メンバーの成長を待つこと、それで組織を成り立たせることの難しさは少なからず分かっているつもりだ。
だからこそ、自分もその中に入ってみたいし、そんな組織の作り方を学びたいと思った。


初めて恋に落ちた会社

今までいくつか興味のある島や会社に訪れたり触れたりしてきたが、ここまで心が震えたことはなかった。

「一緒に働けると嬉しいです。いつでも待ってます。」

そう言って頂いた時、恋愛とすごく近い感情になった。告白されて、自分も同じ気持ちですみたいな気持ち。

私も、この会社とこの人たちと人生を共にしたい、未来を・この人が描いているものを一緒に創りたい、もっとこの会社やこの人たちが考えていることを知りたいという感情。

island companyの皆さんとおでん会

こんな気持ちになったことは初めてで、まだ今後の結論は出ていないけれど、間違いなく私の人生の大きな出会いになった。


自分で0→1をつくるとか、起業するとか、絶対中島に戻るとか、そんな見られ方や形に囚われなくてもいいかな。自分の心に素直に。
私の人生にレールはなく未知数で、どう転んでも私の人生だから。



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