場面緘黙の女性が考案した提示カード ー イギリスからのニュース  

欧米では10月が場面緘黙の啓発月間です。今回ご紹介するのは、どうしても言葉が出ない時に場面緘黙だということを相手に理解してもらうための提示カード。考案者のエリザベス・ヘルプスさんは場面緘黙経験者で、このカードの制作が回復への第一歩に繋がったそうです。

最初に作成したカード

エリザベスさんは現在29歳。場面緘黙と診断されたのは16歳の時でしたが、それまでも軽度の緘黙症状が続いていました。「大人しくて何か問題を起こすわけではないので、問題にされなかったみたい」と振り返ります。

診断が下りた頃には症状が悪化していて、ほんの一握りの人にしか話せない状態だったそう。それから状態は更に悪化し、数年後には誰とも話せない全緘黙に。家族とも、ペットのうさぎとも話せない時期が3年も続いたというのです。

そんなエリザベスさんが直面した問題が、話せないために「失礼な人」と誤解されること。自分のことを理解してもらうために、そして自分と同じように緘黙に苦しむ人たちのために、25歳の時にカードを作成しました。場面緘黙のグループに紹介したところ、当事者や保護者から「私も欲しい」と声がかかるように。

「私には言葉が出にくくなる場面緘黙という不安症があります。言われていることは理解できますが、返事ができないかもしれません」

自らカードを使ってみて、「相手は返事を期待していない」と思えるだけでプレッシャーが減り、人と接することが楽になったとか。不安が減ったこと、仲間に共感してもらえたことに勇気づけられ、少しずつ場面緘黙を克服していくことができました。

現在では、以前は全く話すことができなかった病院という場所で、週に数時間ボランティアができるまでになっているとか。本人にとっては、「場面緘黙をほとんど克服できた」といえる心境だそうです。

現在、2タイプ、各4種類のカードを取り扱っています

プラスティック製のカードは名刺タイプとネックストラップ付のタイプ、それぞれ4種類ずつあります。当事者用と保護者用があり、今ではアメリカやスウェーデンなど海外の購入者も増えているとか。

勇気を出してカードを提示することで、周囲の人とのコミュニケーションが取りやすくなるといいですね。

かんもくネット事務局 みく(ロンドン在住)

かんもくネットでも、保護者用・当事者用の提示カードを提供しています。経験者と保護者が協力して、考案・作成しました。ぜひご活用ください。
提示カードのリンク:リーフレットなど | かんもくネット (kanmoku.org)https://www.kanmoku.org/_files/ugd/0251a2_07191df94ff041cf909b6bb678e96df1.pdf