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女子高生が作った「きえ〜る」の広告から地域の未来を見つめる(北海道北見商業高等学校)〈善玉菌を探す旅 #2〉

今回の善玉菌を探す旅では、北海道のオホーツク管内で唯一の商業高等学校である北海道北見商業高等学校へ伺いました。きっかけは窪之内さんの元に届いた1通のメール。なんと授業で「きえ〜る」の広告を作った生徒がいるとのこと。

「これは善玉菌の匂いがする!」

と、いてもたってもいられない窪之内さん。早速、どのような経緯で「きえ〜る」の広告が誕生したのか、担当された中川先生と、広告の制作者である和田さんにお話をお聞きしました。

右から
北見商業高等学校 教諭 中川 美香(なかがわ みか)さん
北見商業高等学校 流通経済科 3年生 和田 愛生(わだ あい)さん
環境大善株式会社 代表取締役社長 窪之内誠 (くぼのうち まこと)さん
※ご所属は、2022年2月取材当時のものです。

広告を見た環境大善株式会社の皆さんの反応

▲和田さんが制作した「きえ〜る」の広告の一部

窪之内さん これ、めちゃくちゃ環境大善っぽいんです。シンプルだし、抜け感があって、とてもいい。会社のみんなとも「どうやってこの広告を作ることができたんだろう?」と話題になったんです。商業高校ではどんな授業をしているのかというところから興味があるので、ぜひお話を聞かせてください。

商業高校特有の科目「広告と販売促進」

中川先生 流通経済科の3年生を対象とした「広告と販売促進」の授業の一環で生徒に課題を出したのがきっかけです。

窪之内さん いきなりですが、ちょっと待ってください。「広告と販売促進」って科目名なんですか?

中川先生 そうなんです。国語や数学と同じように文科省が定めた授業科目なんです。普通科にはない教科なので、びっくりされますよね。他にも「マーケティング」という科目もあるんですよ。

窪之内さん ほんとだ!ちゃんと教科書もあるんですね!(ページをめくる)うわ〜。めちゃくちゃ参考になりますね。私たちの会社でも、SKU(在庫管理の手法の1つ)とかSV(スーパーバイザー:店舗運営の管理監督者)とか専門用語が飛び交うんですが、こういう共通言語についてみんなでちゃんと同じ理解ができていることってすごく大事なことだと感じています。この教科書を社員のみんなに読ませたいなぁ。

中川先生 本校は11月後半から12月上旬に後期中間試験があるんですが、その後、3年生は1月末で学校が終わりなんです。授業時間も少なく、卒業を待つばかりの時期ということもあり、座学ではなく、体験的・実践的な授業をしようと思いました。そこで生徒達には「『広告と販売促進』の学習内容を使って、自由に何か作品を作りなさい」と課題を出したんです。

和田さん 自由過ぎてはじめは、「何をしよう……」という気持ちでした。

中川先生 実は、本来であれば流通経済科のカリキュラムは、様々な外部講師をお呼びしたり、販売会を自分たちで企画したりととても実践的な学習内容なんです。しかし新型コロナウイルス感染症が流行りだしてから、なかなかそういう機会が取れていなかったんですね。そういうこともあり、最後は思いっきり自由に、実践的なことをしてほしいという気持ちがありました。

「きえ〜る」の広告が生まれたきっかけ

窪之内さん 生徒の皆さん全員が同じテーマで制作物を作ったわけではないんですね。

中川先生 そうなんです。教科書の中からテーマを選んで、自由に考えてもらったので、好きなお菓子の新しい味を企画した生徒や、コンビニの店舗設計をした生徒もいました。

窪之内さん 想像と全然違いました!ということは和田さんが自分で1から考えてこの広告を作ったんですね。

和田さん そうです。絵を描くことが趣味なので、作品に活かせるんじゃないかなと思いました。次にどんな製品を取り上げるか考えたんですが、かばんの中を見たら、たまたま、以前環境大善さんからいただいたパンフレットが入っていたんです。これだ!と思って「きえ〜る」をテーマにすることに決めました。

窪之内さん そうだったの!?前に講演(※)でお渡ししたあの資料?

和田さん そうです。そのときにリブランディングの話も聞いていたので心に残っていました。

窪之内さん 本当に!?講演会がきっかけだったなんて、嬉しいな〜。

※2021年10月8日に、北海道北見商業高等学校の3年生を対象にコピーライターの池端 宏介さんによる授業が行われました。窪之内さんも出席し、生徒の皆さんに環境大善のリブランディングについてお話しました。

「きえ〜る」の世界観と感動を広告にこめて

和田さん キャラクターが可愛かったので、このキャラを活かしたいと思いました。また、実際に「きえ〜る」を使ってみて生ゴミの匂いが消えたことに驚いたので、この感動を伝える広告を作りたいと考えました。

窪之内さん その言葉、嬉しいです。実は、環境大善では「アイコニックブランディング」という考え方でリブランディングを行っています。これは、「会社の理念」を「アイコン」に込めて消費者の皆さんに届ける手法です。このキャラクターは「善玉菌の大善君」というのですが、和田さんが大善君を気に入ってくれたということに、私たちのリブランディングの狙いが届いていることを感じました。

▲善玉菌の善の字をモチーフにして誕生した大善くん

和田さん 「嫌な臭いに『きえ〜る』をかけて、臭いが消える」という広告の大枠はすぐにきまったのですが、背景や雰囲気について結構悩みました。例えば私はインパクトがあるコンテンツが好きなので背景を派手にすることも考えましたが、結局そういう広告にはしませんでした

窪之内さん それはどうしてですか?

和田さん 「きえ〜る」のパッケージを以前のものからシンプルなものに変えたことを知ったり、ロゴコンセプトムービーを見たりしたことで、シンプルさやスマートさを感じたからです。「環境大善さんはこういう世界観を届けたいんだ」と思いました。そこから色味も抑えて生活に溶け込むような、シンプルな雰囲気にしようと考えました。

窪之内さん 会社や製品の事についていろいろと調べてくれたんですね。ありがとうございます。

笑ってもらえたことが嬉しかった

和田さん 友達に作品を見せたときに、笑ってくれたことが一番嬉しかったです。作る過程でも友達に相談をしたり、感想をもらいながらワイワイとした雰囲気で作ることができてとても楽しかったです。

中川先生 実は発表会では、よかった作品に対して生徒に投票してもらったんですね。和田さんのこの作品が1位の評価でした。窪之内さんにこの作品を送る際に「もしかしたら失礼なんじゃないか」とも一瞬思ったんですが、「きっと窪之内さんだったら伝わるだろう」と感じて送ってしまいました。

窪之内さん しっかり伝わりました。本当に環境大善っぽい広告で驚いたんです。なんでこんなに伝わっているのかを考えたときに、自分たちが行ってきたリブランディングの方向性が間違っていなかったことを実感しました。

授業を通して感じたこと

和田さん 趣味がこういう形で活きて嬉しかったです。また、環境大善さんについて調べていく中で、「洗練されたスマートな会社」だと思いました。消臭液を売っているだけの会社じゃなくて、様々な商品にも派生しているし、牛の尿を使っていることで環境にも優しいということについて改めて理解を深めることができました。

中川先生 自由課題を出した理由の1つに「興味をもつことの大切さ」を伝えたいという思いがありました。今の生徒たちは、身の回りにいろいろなものが溢れているのですが、好んで見ている幅というのは狭くなっている気がしています。身の回りには様々な可能性や多様性があるので、そういったものに対してよそ見をしながら生きてほしいと感じています。同じ教科書で学んだ35人の生徒たちが、「広告」や「商品の新しい味の提案」、「店舗設計」などそれぞれの興味に応じた課題を行っていました。その中で「楽しかった」と言ってもらえて本当によかったです。

窪之内さん 自由な課題を与えられると、意外と人って動けないものですよね。私たちの会社でも「地球の健康を見つめる」という余白たっぷりの理念があり、社員にはその理念のもと自分の興味を活かして新しい事業をつくったり、挑戦をすることを求めています。そういう場で重要なことって、基本となる言葉や理念について理解・共感できていることだと思うんですよね。ですので、今回の授業で行ったようにベースを教科書でしっかり学んだ上で、自由に挑戦できる場があるというのは、私たちの仕事への取り組み方と同じ考え方だと感じました。

▲環境大善株式会社のコーポレート・スローガン「地球の健康を見つめる

地域のマーケティング・ブランディング人材を育成する

中川先生 私は北見出身ということもあり地元の企業の皆さんともっと繋がりたいと考えています。本校はオホーツク管内で唯一の商業高校ということもあり、マーケティングを学んでいる生徒たちが地域企業に貢献できることもたくさんあると思うんです。

北見商業高校POPづくりワークショップ|池端 宏介 ikepong|note

▲北海道北見商業高等学校さんの取組の1例。地元の雑貨・本屋さんで行われたオホーツクの商品フェアにて。商品のコピーやPOPをコピーライターの池端さんと一緒に高校生が考えました。

窪之内さん そうですよね。オホーツクにはいい素材がたくさんありますが、それらの魅力を発信できる人がいないことについて、常々もったいないと思っています。今回のような授業は、高校生にとっては実践的学習であり、企業にとってはマーケティング・ブランディングにつながることから、両者にとってメリットがあると感じました。実際に、今の高校生くらいの年代って、もう買い物の仕方が違ってきているんですよね。例えばネットで物を買うことが普通になってきている。

和田さん そうですね。ネット通販は普通にしている子が多いですよね。

中川先生 ネットで見て、店頭で見て、値段や口コミで判断するというのは新しい買い方ですよね。

窪之内さん そういう新しい物の買い方をする次の世代と、マーケティングやブランディングが考えられることってすごく企業にとってはプラスになると思うんだよな。環境大善も若い子へのアプローチをしたいと思っているんだけど、まだできていなくてね。和田さん、どんなことをすればいいと思う?

和田さん そうですね。環境大善さんはYouTubeやFacebookはされていると思うんですが、TikTokはまだされていませんよね?TikTokから売れたものってものすごくあるので、若い子に情報を届けるのにはいいんじゃないかなと思います。

窪之内さん TikTokか〜(苦笑)。分からなくてまだ手を出せていない……。でもこういう風に言ってもらえることって重要だと思うんだよね。

中川先生 私も新しいものって分からないことも多いのですが、こういう若い感性や力を信じて、地元企業のみなさんに活用してもらえればと思っています。

窪之内さん 本当にそのとおりだと感じます。今後もぜひコラボしましょう!今日は「きえ〜る」の広告の制作秘話について伺って参りましたが、発展として、商業高校での実践的な学びと地元企業のコラボレーションが地域の未来をつくっていくという可能性を感じることができ、とても楽しい時間でした。みなさんありがとうございました。

※写真撮影時のみマスクを外しています。

ライター:吉田(百目木)幸枝/https://twitter.com/domeky


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