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☆試し読み☆ 『現代文のコア』その2

7月8日発売『現代文のコア 読解のための最重要テーマとキーワード』より、【試し読み】をお届けします。

本書は、大学入試現代文に頻出のテーマを全60コアに凝縮し、ストーリー仕立てでわかりやすく解説した1冊。「現代文が苦手でアタマに入ってこない…」という方は、コアから始めてみませんか?

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今回は、第6章「文化」より、コア35【異文化理解】をご紹介します。

コア35【異文化理解】「異」文化は理解しがたいもの

現代文では、異文化をテーマにしたものがあります。
いまや、街を歩けば異文化パーソンはふつうに見かけますし、仕事や旅で異文化に行くこともあるでしょうから、異文化についての話があるわけですね。
とはいえ、あまりにも現実的過ぎると旅行ガイドブックになってしまいますので、異文化の本質とか精神を説明することになるようです。
本質とか精神なんていうムツカシイ話をわかりやすくするために、同じものに対する反応の違いで説明することが多いのです。

例えば、相撲を見たときの反応の違いです。
日本文化なら、横綱には一目置きますし、高額なチケットを買って観戦しに行くのも価値ある体験だと思われます。しかし、異文化パーソンはこの相撲を、肉の多い男がハダカに近い格好で立ったり座ったりしたあげく、汗かいてぶつかって、こかされた、突き飛ばされた……なんて見るかもしれません。

このように、じぶんと異なる文化は理解しにくいというテーマなのですね。

別の異文化パーソンなら、相撲はヨクワカラナイけど、これが日本文化の伝統ナンデスネ……と、理解(したふり)をしてくれるかもしれません。しかし、これも、ほんとうに日本文化を自然に理解してくれたかというとアヤシいものです。
これは、僕たちが異文化について、自然に理解できないことが多いのと同じです。
精神とは、所属している文化のなかで作られていきますから、文化が異なると精神も異なるというわけです。

唯一、異文化に似たものがあれば、それを活用して理解に近付けることは可能かもしれません。またまた相撲ですが、モンゴル文化にはモンゴル相撲がありますから、ある程度は理解してもらえそうですし、西洋文化には「古代ギリシャのパンクラチオンの日本版」と言えば、理解してもらえるかもしれません。

ただ、それだって結局は、じぶんの文化の枠から出てくるわけではありませんよね。

異文化であろうと同じ人間なんだから頑張って理解し合うべきじゃないか!というのはその通りです。ただ、その意見は一般論です。現代文は一般論とは違う話をするのですね。

「じぶんの文化だけが最高、他の文化は劣ってる!」とカタくなってたら異文化理解なんて到底ムリなので、それぞれの文化にはそれぞれの正解があるんだという「文化相対主義」が結論みたいに、一応なっています。
しかし、やはり「自文化中心主義」も根強いものがあり、現代文では、異文化理解は一筋縄ではいかないというのが前提なのですね

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入試での出題例

・2020年 立教大(経済)
・2019年 中央大(法)
・2019年 東京経済大(現代法)

関連重要語句

□自文化中心主義
じぶんの文化を基準にして、異文化を低く見たり、批判的に見たりする態度のこと。
=エスノセントリズム
□文化相対主義
諸文化をそれぞれ独自の価値体系をもつ対等な存在としてとらえる中立的な態度・研究方法のこと。
□ニュートラル
いずれにも片寄らないさま。中立的。中間的。
□クレオール
西インド諸島・中南米などで生まれ育ったスペイン人、フランス人などのヨーロッパ人のこと。西インド諸島・中南米における、スペインやフランスの影響を受けた混交的な文化や言語についても用いられる。
=クリオール
□周縁
もののまわり。ふち。都市の中心に高位の社会階層が位置し、中心から遠い周縁に下位の社会階層が位置する構造を説明する際や、社会システムにおける資本や権力の偏在を表す際に使われる。
□エキゾチシズム
異国趣味。異国情緒。

【異文化理解】こぼれ話

例に挙げた「モンゴル相撲」という呼び名も自文化中心主義のあらわれではないでしょうか。日本文化では「日本相撲」とわざわざ言いませんよね。まず、日本の相撲があって、それとは異なるからモンゴル相撲と呼ぶのですね。
さて、「エスノセントリズム」という用語をつくったのは、アメリカの社会学者です。いかにもアメリカ文化の発想ですね。ふと、じぶんたちが異文化を見るときの態度に気が付いたのでしょうか。


お読みいただき、ありがとうございました!

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