☆試し読み☆ 『現代文のコア』その3
7月8日発売『現代文のコア 読解のための最重要テーマとキーワード』より、【試し読み】をお届けします。
本書は、大学入試現代文に頻出のテーマを全60コアに凝縮し、ストーリー仕立てでわかりやすく解説した1冊。「現代文が苦手でアタマに入ってこない…」という方は、コアから始めてみませんか?
今回は、第10章「読解」より、コア57【一般論】をご紹介します。
コア57【一般論】一般論をひっくりかえしたところに筆者の主張あり
「文章を読みながら、大切なところに線をひっぱっておくゾ!のは、現代文で大切な読解作業ですね。
問題なのは、線をひっぱったところが、ほんとうに大切なところかどうかなんですね。
しっかり読んでいきました。真面目にやってます。「よし! ここ、大切なところっぽいぞ、線をひくゾ!」と頑張ったのに、いや頑張ったから、解きにくくなっちゃうという困った事態があるんです。
それは、大切なところをじぶんで決めちゃったからですね。真面目に頑張ってくれてる受験生は、ちゃんとした人でしょう。つまり、一般的な常識を持ってる方なんです。
もともと、専門家や研究者が書いた研究論文が本になり、その本から抜粋した一部分が、現代文の課題文として出題されるんですね。研究者は、ふつうの人が知らないことを研究論文として書き、発表しています。
つまり、現代文は、僕らに馴染みのないテーマが多くなるわけです。
ここで、ズレるわけですよ。受験生が「大切なところっぽいぞ、線をひくぞ!」と見たところは、筆者には大切なところではないのですね。そのズレたところに線をひっぱっていても、問題が解けるポイントを押さえてはいないんです。
このように、僕らの思い付く一般的な常識は、研究論文のメインテーマつまり大切なところではありません。ふつうの内容や一般論しか書けないなら、本を出版しないだろうとも言えます。
ですので、一般論は大切なところじゃありませんが、現代文では一般論を発見しておくと効果的です。
筆者は、一般論じゃない話をしますから、一般論をキャッチしたら、それをひっくりかえしてみるんです。そうしたら、筆者の主張が見えてきます。確かな予測ができるんです。そのためにも、一般論は発見しておきたいわけです。
発見のためのサインはもう決めておきましょう。「多い」「常識」「ふつう」「一般」「傾向」「主流」なんて出てきたら、一般論のサインです。
例えば、現代文で「一般常識としては讃えられる傾向があるだろう」なんて一文を発見したら、イケますよね。筆者は「讃えられるのはオカシイ」と言いたいわけです。
一般論をひっくり返すと筆者の主張が確かな形で見えてきます。予測可能ですね。
入試での出題例
・2019年 東京経済大(経済)
・2019年 日大(芸術)
・2015年 奈良教育大(前期)
関連重要語句
□研究論文
研究論文には、大きく分けると、著者独自の研究をまとめた原著(ジャーナル)論文と、先行研究をまとめた総論(レビュー)論文の種類がある。
□多数派
属する人数が多い方の派。マジョリティ。
□ふつう
特に変わっている部分がなく、ごくありふれたものであること。また、そのさま。
□常識
一般的な社会人が持つべき知識や行動様式のこと。時代・地域・社会階層が異なれば通用しない常識もあり、相対的な部分を多く含む。
(参)もともとは、人間が共通に持っている感覚のことを指し、18世紀イギリスの哲学者・リードはこの感覚に基づく根本原理を「常識の原理」として、諸学問の基礎としようとした。
【一般論】こぼれ話
面白いとかオカシイというのは、ふつうじゃないという意味ですよね。ふつうを知らないと、ふつうじゃないことを言うことはできません。研究者はふつう(レビュー)を知った上でふつうじゃないテーマ(ジャーナル)を追います。これって、芸人さんと似てる気がします。面白オカシイ話をするために、あえてふつうじゃない話をするのがボケ担当。ツッコミ担当がふつうサイドですね。ふつうを知らずに面白いことはつくれないんです。
お読みいただき、ありがとうございました!
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