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東京人になった日

30歳で上京した。
最初に住んだのが下北沢。どこに住もうかとあちこち見てまわったが、
下北のあの雑踏に迷い込んだ瞬間、心がざわめく。
「何ここ?パリやん!」
大阪では見たこともないオシャレな空間。小道が交差しそこかしこに雑貨屋さんやカフェが並んでいる。もう一目惚れでした。
「休日は遅く起きてブランチして…」
「夜はあそこのイタリアンで呑んで…」
楽しそうなTOKYO LIFEを夢見て住み始めたのです。
ただテレビ業界は激務だったのでそんな優雅な日はほとんどありませんでしたが😓
今でも下北沢に行くと30年前を思い出して甘酸っぱい気持ちになります。
やはり誰にとっても“1stTOKYO”は特別な場所ですよね。

では上京した日が東京人になった日なのか?そうではない…。
物理的には上京した日なのかもしれないけど、住んでいても中身は田舎者のまま。東京のどこにいてもフワフワと浮いている感覚でした。
街に馴染んでいない異物。受け入れられていないのです。
で、半年くらい経ったある日。タクシーの運転手に行き先を告げた時に…
「…キラー通りを行ってもらって」
えっ!俺キラー通りって言った?
いかにも東京なオシャレストリート名が自然と口をついて出たのだ。東京人じゃん。

キラー通り。

今はないが青山ベルコモンズというオシャレなファッションビルがあってね。なんか渋谷や原宿より少し大人な雰囲気。アンティークショップやワタリウム美術館などイイ感じなんですよ。何よりそのネーミング!「キラー通り」って。
バカリズム脚本の「架空OL日記」内で三軒茶屋を三茶と略せないOLが出てきたのですが笑、その気持ちなんとなく分かる。
「キラー通り」もかなりハードルの高い名前ですよ。

僕は地理おたくなので通りや坂、交差点の名前に惹かれる。
「星条旗通り」「骨董通り」「コロンビア坂」「ニーヨンロク」「札の辻」…東京の地名の響きに魅了されその歴史や背景に興味を持ってしまう。おそらく東京育ちの人は何も気にせず言えるのでしょうが、我々にとってはなんか照れちゃうワード。でもカッコつけて言ってみたい。
それで気になってキラー通りの由来を調べたら名付け親はコシノジュンコ!まさかの大阪人でした😅こういうのが面白いですよね。

「キラー通り」が自然に言えた日がきっと僕が東京人になった日なんじゃないかなぁと思っています。
まもなく4月。また新たな東京人が生まれます。早く馴染んでください。

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