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島田龍「左川ちかを探して」

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『左川ちか全集』の編者が左川ちかの足跡をたどります。
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【左川ちかを探して】第2回 北園克衛とともに(後編)詩世界の王女のように(島田龍)

【左川ちかを探して】第2回 北園克衛とともに(後編)詩世界の王女のように(島田龍)

第2回 北園克衛とともに(後編)詩世界の王女のように
 女学生時代の左川ちかは、小指の短いことを運命に見立てて寂しがっていた。遺品として遺されたスケッチブックには手形がなぞられている。短いといえば短い方だ。少女が嘆くほどかどうかはともかくとして。

 このスケッチブックには北園克衛の手形もとられている。そういう親しさが二人にはあった。北園の指はいずれも長く、ピアニストであれば理想的だろう。

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【左川ちかを探して】第1回 北園克衛とともに(前編)二人の出会い(島田龍)

【左川ちかを探して】第1回 北園克衛とともに(前編)二人の出会い(島田龍)

第1回 北園克衛とともに(前編)二人の出会い
 左川ちかの詩は孤独ではあったが、詩人としては出会いに恵まれていた。その一人が九つ年上の北園克衛(一九〇二~七八)だ。北園は詩人であると同時に、編集者でありデザイナー・写真家でもあった。モダニズム詩壇を代表する北園に関しては、ジョン・ソルト『北園克衛の詩と詩学 意味のタペストリーを細断する』(田口哲也監訳、思潮社、二〇一〇年)という大著がある。

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