素人探偵 Madam ε

 Madamεは、1年前のドリームジャンボ宝くじに当たってから、悠々自適の暮らしをしている。朝からいつものオープンカフェにいると、サングラス姿の背の高い男が近づいてきた。また手伝ってくれない と男は言った。
 その男は、兄のようにしたっていた4つ年上のおさななじみで、今は、祖父が開いた小さな興信所で探偵をやっている。


 一昨年の春、調査にどうしても女性が必要だからと、初めて同行をもとめられた。

 当日は、寒の戻りで、小雪のちらつく寒い朝だったが、ドライブができるとうきうきしながら、アパートからちょっと離れた大通りで、車が来るのを待っていた。ところが、10分たっても20分たっても現れない、心配して電話してみると、大丈夫、今向かってると、なにごともなかったかのように、かえしてきた。小一時間遅れてようやく姿を現した。すっかり、冷えきったからだで助手席に乗ると、よくがんばったね、探偵として耐えられるかどうか試したんだよ。とこともなげに言ってきた。まったく、いいかげんなやつだと思ったものの、まあこれから一日いっしょにいられるからいいかとあきらめて、楽しむことにした。

 やっぱり寝坊していたらしく、信号待ちのたびにいらいらしていた。高速に乗るとここぞとばかり、すいすいと運転していた。しばらくすると、そとのほうから、「前の車止まりなさい」という天の声が聞こえてきた。
 結局そこで、ドライブは中止、調査にも行くことができず、踏んだり蹴ったりの1日になった。

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 また、手伝って って 前はなにもできなかっただけど。今は暇を持て余してるので付き合うことにした。

 今度の仕事は、小さな魚屋から一代で財を成し、今は水産業と水産加工場を経営している社長からの依頼で、ちやほやされてそだった息子が、金遣いの荒いアパレルショップの店員とつきあっているようなので、その女性の素性調査である。

 大型商業モールのテナントで働いているので、買い物客を装いその女に近づき、さらに居住地を突き止めるのが今回のミッションだ。
 夕方のショップを訪れると、彼女は、奥で事務仕事をしているようで、とうとう接触することができなかった。帰宅時に尾行しようと、従業員通用口を見張っていると、彼女があらわれた。駅に向かうかと思いきや、通りに一台のシルバーの車が止まり、彼女はその助手席に乗り込んだ。運転席には依頼人の息子だ。あっけにとられていると、車は出ていき二つ先の角を左に曲がっていった。
 慌てて、別の通用口を張っていた探偵のお兄ちゃんに連絡、車で追いかけることになったものの、車の車種もわからない。とりにがしたかと思ったものの、とりあえず角を曲がってしばらく走っていると、コンビニの駐車場に、にたような車がとまっていた。様子をうかがっていると、二人が手に手を取ってコンビニからでてきた。その後、車を追跡してアパートをつきとめることができた。
 強運の女になったんだと、微笑んだ。

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