土地探しにラチャ地方へ。慎重と決断の板挟みの話。
一泊のみでしたが、ジョージア北西部の山岳地方のラチャ地方に行ってきました。ラチャ地方は2020年にジョージア在住日本人ガイドのゾノさんと行ったきりで、4年ぶり2度目の訪問となりました。中心都市のアンブロラウリに滞在しました。
前回の記事でヒンカリを食べた話をしましたが、ヒンカリを食べにわざわざ行ったわけではなく、用事というか土地の見学をさせてもらいに行っていました。
これまで慎重すぎて行動を起こせてこなかったのですが、一念発起というか色々考えず、まず行動してみようと思い土地探しに出たわけです。
決断と慎重の板挟みになっている話です。
移動の段階で新たな発見が
ラチャ地方は4年前に一度訪れたきりだったので記憶もあいまいでトビリシからの道順も覚えていませんでした。
Didube駅から朝9時発のマルシュルートカで出発しました。チケット代は30ラリ(備忘録)。
経路としてはなんとなく、西に進んでゼスタポニまで行き、そこから北上してアンブロラウリに至るのかと思っていました。実際はゼスタポニまで行かず、ハシュリの手前のゴミ村から北上し、サチュヘレを経由してラチャ地方に入るという経路でした。
サチュヘレから進むルートがあることを知らなかったので勉強になったと共に、標高の高低差が大きく変わる経路だったので景色も途中の地点で大きく異なっていて興味深いバス移動でした。
例えば、サチュヘレからはしばらく登りが続き、シュクメリ村(シュクメルリの名前の由来となったと言われている)の当たりでは標高は1,700mを超えており雪景色でした。
その辺りを過ぎると下り坂となり、しばらくすると一転、美しい紅葉の景色が見えました。
下り続けて目的地のアンブロラウリの標高は550mほど。
高低差が結構大きくて道中耳が痛くなることもありましたが、移動の段階で新たな発見があり良かったです。
やるべきことを始めないとワインはできない
僕はジョージアワインに惹かれ、ジョージアワインを造りたいと思いジョージアに来ました。現地の大学でワイン造りを勉強したり、国内の様々なマラニを訪問したり、知識の量はかなり増えたと思うのですが、自分の手でワインを造るための行動は開始できないまま5年が経ってしまいました。
自分の理想のワインを造るためにはどの地方が良いのか、金銭の工面はどうするか、何か良い縁があって土地やマラニを良い条件で借りたりすることはできないか… など色々と考えたり悩んだりしてアクションを起こすことができずにいました。
今年からアチャラ地方の マラニKhimshiashvili Cellarさんに住まわせてもらってジョージアの伝統的なワイン造りを実践的に教わっているのですが、これは自分にとっては始まりの一歩かなと思っています。
何をするにもまず誰かから教わる「修行」的なプロセスは必要だと考えているのと、これがきっかけで色々な「縁」ができて後々役に立つことがあるかもしれないという打算的な考えもあります。
今は修行の後、自分の手でワイン造りを始める行動を起こすために悩んでいます。
なぜラチャ地方?
ジョージアを西と東に分けるとするならば、ラチャ地方は西ジョージアに属します。僕はいくつかの理由から西ジョージアに興味があり住みたいと思っています。現在アチャラ地方で暮らしているのもそこからです。
現在はアチャラ地方のマラニでワイン造りを教わっていますが、将来ワイン造りを始め住み着く場所はざっくりと西ジョージアと、アチャラ地方にこだわらなくても良いかなと思いました。
Facebookで色々と土地を探してみたところ、ラチャ地方の人々からたくさんの連絡を頂いたので、今回はラチャ地方の見学に行ってみることにしました(ジョージアはFacebookユーザーが多く、地方ごとにグループがあって情報交換や、家や土地の買い手を求める投稿がされています。ジョージアに住むにあたってはFacebookがとても便利です)。
高地にあり冬の寒さや雪の厳しさはあるものの、中心都市のアンブロラウリでは必要なものはほぼ全て揃い(商店やコンビニがちゃんとある)、高品質なワインが生産されています(フヴァンチカラというブランドのセミスイートワインが有名です)。何よりコーカサス山脈を見渡す山の景色がとても美しく、ストレスの少ない暮らしを送るのができるのではないかと思います。
土地の見学。地方では買い手を必要とする人がたくさんいる。
アンブロラウリに到着し、事前に連絡をくれた人たちの中から、2人とお会いし土地を見学しました。一泊のみの滞在だったのと、なるべく安価な土地が良いのもあって、2件に絞って訪問しました。
1件目はアンブロラウリの空港近く、町から3kmほどのDzirageuli村の土地。幹線道路沿いで、しかも既にブドウが植わっている土地でした。値段も他と比べると破格級の安さで、条件としては申し分ないようにみえました。
この土地を連絡してくれた人こそが、ヒンカリを奢ってくれた人だったわけですが、彼は家の改修工事のためにお金が必要でこの土地を売りに出す決断をしました。また、他にも仕事がありブドウの世話をする時間もないといいます。
この土地の隣の区画もブドウ畑なのですが、お年寄りの女性が所有者で彼女も同じくブドウの手入れができておらず、そのうち売りに出されるのではないかと言われました。
立地的には高品質のブドウやワインができる場所なのですが、若者の都市部への流出や金銭の必要性から売りに出さざるを得ない人が多いのだなと思いました。実際、Facebookを通して僕に連絡をくれた人は相当数いました。
2件目はこれまたアンブロラウリの近く、1.5kmほど離れたところにあるゴリ村の土地。
ここは手がつけられておらず放置されている土地なのですが、かつてはブドウ畑として使われていたといいます。少し高地にあってアンブロラウリの町を見下ろすことのできるこの土地もかなりの安価で売ってくれるとのことで、しかも連絡したのが僕が初めてだとのことでした。
2件とも写真を撮り、しっかり考えてまた連絡すると伝えてその日は別れ、翌日アンブロラウリから出発しました。
寝て起きるとまた慎重に。「上手くやる」にはどうするべきか
今回土地のオファーを数多く頂き、実際に会った人たちからはいわゆる「詐欺師」のような感じも受けませんでした。まだラチャ地方の視察しかしていませんが、実際に買おうと思えば買えるんだと思いました(手続き上で解決すべき問題はあります)。お金も銀行や親から借金すれば工面はできると思います。
しかしそれは「上手い」やり方ではないんじゃないかと一晩経って思ってしまいました。いわゆる普通のプロセスやなと。ジョージアに5年住んで、色々と思い悩んできたことや作ってきた繋がりなどを活かしたもっと「上手くやる」方法があるのではないかと思ってしまいました。
金銭的にももっと上手くやる手段、それでいて買い手と売り手でwin-winになれるやり方、ジョージアに5年住んだ「外国人」である僕ならではの始め方があるんじゃないかと思い、再び考え直そうと思いました。
というわけでまた慎重に戻ってしまったわけですが、今回は「決断」を早く起こすための積極的な「慎重」なので、何かしらのアクションはすぐしていこうと思います。
今回も呼んで頂きありがとうございました。
酒見莞爾の活動や考えに興味を持ってもらえた方、よろしければサポート頂けると嬉しいです。ジョージアでの生活やワイン造りのための活動費として、大切に使わせていただきます。