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Buen Camino 2022 あなたも巡礼に出かけてみませんか? ⑫

(12)「酷暑のメセタを歩く」

 8/26(金) 第8日、晴れ
 昨日は到着が早かったので、その分、足を休めることができた。今日は、薄暗い7時前に宿を出た。マメのことが心配だったが、出だしはまずまずであった。
カリオン・デ・ロス・コンデスCarion de los Condesは大きな町で、昨日ここまで来ることができていたらよかったと思った。ただし、無理だったが。

カリオン・デ・ロス・コンデス

 町を出て、道路沿いの砂利道に入って1時間もすると、足の痛さがいよいよ我慢できなくなった。道端で靴を脱ぎ、ガーゼを当てて患部を保護したが、ほんの一時凌ぎであった。立ち止まると痛みはなくなるが、歩き出すと再び痛くなる。要はこんな状態をいつまで続けられるかだ。
スピードが出ないので、遠くに見える町がなかなか近くならない。食事ができる店があったので、休憩を兼ねて早めに昼食にした。

 そこから郊外に出ると、周囲に全く家がない一本道になり、それが延々と続いている。前を見ても後ろを振り返っても、真っ直ぐの道である。そして、相変わらずの炎天下とハエの攻撃である。

 スペインに侵入したナポレオンが「ピレネーを超えると、そこはアフリカだった」と言ったのは、このメセタのことではないだろうか。温度計は28°Cと、さほど高くはないが、日本では体験することができない過酷さである。ナポレオンのフランス軍も、足のマメと暑さに苦しんだのではないだろうか、などと思いながら歩いた。

 暑さと乾燥で唇は乾き、露出している皮膚は真っ赤に焼かれる。午後昼寝(シエスタ)をする習慣があるのは当然だと思った。時々、巡礼の自転車部隊が颯爽と通り過ぎて行くが、彼らも露出した部分は真っ赤に日焼けしている。

 ザックにブラジル国旗をつけた高齢の女性が一人で歩いていたが、必死に何かに耐えているような雰囲気があり、声をかけるのも憚られた。彼女が耐えているのは、心に抱えている問題なのであろうか、それともこの暑さであろうか。過去の巡礼たちも同じであったのだろう。

遠くに風力発電の風車が見える以外、構築物は何も見えない。太陽光発電が見えないのが不思議だ。

メセタを貫く一本道

 写真にあるように、道は単調な砂利道である。靴底に石が当たると痛いので、できるだけ避けて石がないところを選んで歩いた。足が痛くなるほど大きくないが、小さくても痛いのである。そして、ここの石はどれも丸くて硬い。ここが河原であれば、川によって浸食されて丸くなったと理解できるが、川などどこにも見当たらないのに、どうして丸いのだろうか?それとも、どこかからこんな石を運んできたのだろうか?
 私が考えた結論はこうである。つまり、これらの石は1000年もの時間をかけて巡礼に踏まれたことで、角が削られて丸くなったのだと。柔らかい石だとその過程で壊れてしまうが、ここの石は硬いので潰れることなく丸く残ったのではないだろうか。この推測が当たっているかどうか解らないが、石の形に巡礼の歴史が刻まれていると考えるのも、ロマンがあって楽しいではないか。ただ、この道が昔から巡礼路であったのかという問題はあるが・・・。
 まあ、この暑さでは、頭がボーとして、句を考えることもできず、こんなことでも考えないと間がもたない。大型の農業用トラクターが2台、砂埃を撒き散らかして通り過ぎて行った。以下は借りものの句である。

どうしようもない 私が 歩いている(山頭火)

 スペインにメセタと呼ばれる独特な地形があって、それは日本では見ることができない風景であることは知っていた。だからいつか是非見たいと思っていた。
しかし、実際に歩いて経験すると、それは想像とは全くかけ離れたものであった。この巡礼中で、最も印象に残った風景であり、ピレネー越えと共に最も過酷な行程であった。

 今日の宿がある村カルサディージャ・デ・ラ・クエサCslzadilla de la Cuezaは、突然現れた。一般的には、遠くの方に教会の尖塔がまず見え、徐々に村の景色が現れるのであるが、この村は緩い坂を下ったところにあったので、視界に捕らえることができなかったのである。それも僅か200mぐらい先にあった。これで今日の辛い一日が終わった。

 宿の前に人がいたので、泊まることができるかと尋ねたら、OKであった。アルベルゲでは、パスポートを提示しなければならない。宿では、それを見て番号や名前、性別、国籍などを記録するが、ここでも生年月日のところでペンが止まり、私の顔をまじまじと凝視した。73歳の男はどんな顔をしているのだろうかと。さぞ、疲れた顔をしていたのではないだろうか。2階に登る階段が辛かった。

両足ともこういう状態

 人口は100人以下であろうか。これまで通過した中では最も小さな部類の村であった。宿は2食付きで36€と少し高い。ここは2人部屋だが、今日は私一人なので気楽に過ごせた。シャワー、洗濯を済ませ、家とFBなどへ投稿をした。
夕食はサラダ、牛肉とジャガイモの煮ものにコメ、デザートはヨーグルトで美味しかった。(22.4km、37,665歩)

夕食のサラダ
コメと牛肉・ポテト

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