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「ユーコンを流れる」2019 ユーコン川344km、8日間一人旅⑫

10)(9/5) 「カーマックスからホワイトホースへ」

 この朝は冷え込みが強く、これまでで一番の濃霧であった。旅が終わっていて良かった。
 この日はテントを撤収して、キャンプ場からカーマックスCarmacksという何の変哲もない小さな町まで、重いザックを背負って、所々に家が点在する道路沿いを1時間余り歩いて移動した。
 途中、上流部では唯一ここにだけに架かっているという橋があり、その脇に付けられた歩道を渡った。網状になって下が透けて見えるので、かなりの高度感があって、いい気持ちはしない。

向こう側に橋が見えている

 ガソリンスタンドを併設した大きな雑貨店があったので、若い女店員にホワイトホースに行くバスのことを尋ねた。「旅行者か」と聞くので、「そうだ」と答えると、わざわざバス会社に問い合わせてくれ、時間の確認までしてくれて有難かった。

狼の絵柄のTシャツを買った

 店には、いろいろな人が次々にやって来る。バスを待つ間、天気がいいので店の横で濡れたテントを乾かし、周辺を散歩した。寂しい街であった。昼食はサンドイッチとジンジャーエールで済ませた。

 16時に来る筈のバスが30分過ぎても来ない。どうしようかと途方に暮れていたら、そこにいた人が「バスを待っているのか?」と聞くので、「そうだ」と答えると、「あれだ」と教えてくれた。「バス」と思っていたらワンボックスカーで、それで気が付かなかったのだ。確かに、車の側面にHUSKY BUSと書いてあった。
 後から分かったが、私以外にも何人かの乗客がいた。皆、川下りに来た人たちで単独行は私だけ。手のマメを見せると、彼らも同じで、それがユーコン川下りの勲章のように見えた。

カーマックス

 バスは17時に出発して、ホワイトホースまでの2時間のドライブは、池と森が連続する高原の初秋の風景であった。まるでTVのCMのように美しかったが、他の乗客はと見ると、皆眠りこけていた。

車のフロントガラスにヒビが入っている

 ホテルに着いて最初にしたのは、熱い湯を張ったバスタブに体を沈め、冷え切った体を緩めることであった。夕食は、町のレストランでビールを飲み、食べ損ねた鮭料理を味わった。

 翌朝(9/6)、KP店に挨拶に行き、借りていた釣り竿と使用することがなかった熊スプレーを返却した。持ち帰ろうにも、スプレー缶は飛行機には乗せられない。また、余った日本食を担当者S氏に渡してもらった。
 レストランで朝食を終えてホテルに帰ると、キャンプ場で一緒になったドイツ人グループに会った。彼らもこれから帰国するところだった。

 空港へは時間があったので、市内を循環するバスを利用して、市内見物ができた。空港ではオーロラを見に来たという2組の日本人団体に会った。川下りをし、オーロラを見たというと、「凄いですね!」と驚かれた。彼らはオーロラ見物が目的であったが、私には「おまけ」であり、ちょっとした「お得感」を味わった。

 バンクーバーまでの空路はカナディアンロッキーの上を飛んだが、本当に「ロッキー」(岩山)であった。日本の山に比べて面白味に欠けるが、上空から見た氷河地形は美しかった。

 帰りのバンクーバー空港では一度荷物を受け取り、再び預け直さなければならなかった。マイレージの利用なので、その際、日本までのチケットを無事に受け取ることができるかということが、ずっと心を悩ませていた。
 搭乗手続きの列に並んでいた時に、カウンターが5〜6カ所あって、この人には当たりたくないなあと思っていた女性に当たってしまった。覚悟を決めて、「マイレージで福岡まで」と言うと、笑顔でチケットを発券してくれ、荷物を預かってくれた。「良かった」、「これで日本に帰れる!」。

 上海を経由して、福岡国際空港には、次男が家族と一緒に迎えに来てくれていた。日本は、まだ夏の盛りであった。(9/8)

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