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春っぽいから詩

──冬と春の間

冬が春に殺された
その復讐として
惜別がある
その痛みに
人は泣く

春が冬を刺し殺す
その現場には
血のような桜が咲く
その温みに
虫が湧く

春はその重責に耐えられず
自死して散った
その遺書として
鳥は鳴く

それを儚いと
いう勿れ

定義ばかりにこだわって
みんな泡を手放した
心に染み入るものはなくなった

雲煙は
水たまりにならなければ踏まれない

人工言語の偽陽性
トポロジーの可用性
生具観念の蓋然性

この世界に宿る数々の儚さを
季節のせいにすること勿れ


君の足跡に冬の死骸を見る


愛は永遠
たとえ春が死んだとて


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