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睡眠時タケノコ症候群

このところ眠くて仕方がない。

「艱難汝を玉にす」とは言うけれど、苦労を経験したところでさっぱり身についていない私のことだ。少しばかり前から因果律にのっとり眠れない時期のあとに眠りすぎ的要素をとりいれる兆候はあったわけで、近頃の睡魔はいっこうに居なくなる気配がない。私がのび太なら睡魔はドラえもん、といった具合に今日もこうして家族のような面構えでそれは自然に居座りつづけている。

常識的に考えればいくら眠くても一日いっぱい好きなだけ寝ればこの際限なく襲ってくる眠気から解放されると思うのだけれど、得てして例外とは常識よりも蔓延っているものである。

眠気は一向にいなくなる気配を見せない。 

こんなに眠くて眠くて、もしかしたら私は人生の前半であまりにも生き急いでしまったがために体はもう既に亡骸状態になってしまったのではないだろうか?という不安のひとつも湧いたり湧かなかったり、そんな心配を巡らせて横になっていたら時は瞬く間に過ぎゆき過ぎゆき またひとつあくびが出た。


といったかつての一日が果てしなく遠く感じるほど

最近、全然眠れない。

なんで????なんでなんだぜ?????
何で昼間眠すぎるのに夜になると目が冴えてくるんだよおいすっかり昼夜逆転だよこっちはよお。どうした?24時になったら無理矢理布団に入るけどそこから2時間以上寝付けない事が殆どだ。私はいつだって美しき朝型ばばあになりたいのにこれじゃあただの醜い夜型ヤングマンじゃないかよ悲しい。

ああもう寝てる間に全員

頭からタケノコ生えて寝違えろ!!!!


そう強く念じれば右から規則正しい寝息が聴こえてきて、(あぁやっぱりもう寝てしまったんだ)とわたしはそれまでの気持ちを一旦左へ受け流す。私の右側には愛しのベイブこと彼氏が、まさに子豚のような軽やかないびきをかきながら、ぐーすかぴーすか気持ちよさそうに寝ているのだ。先に寝やがってこいつ寝てる間に頭からタケノコ生えて寝違えたらいいのに!なんて愛おしくて憎たらしい生き物なんだろうか。

ぐーすかぴーすかふごふご鳴いているその不思議な生物がどんな顔で寝ているのか私はそれを見たくって堪らないのだけど、いくら目を凝らしても暗闇のなかで表情は見えず、ただぼんやりと顔の具材のようなものがそこに並んでいるのだということしか認識できない。

つまんないなあ、つまんねーよ。先に眠りの世界へ行ってしまったんですね。あなたはそうやって、いつも私は置いてきぼりですか?

こんなときにまで私は孤独をかこっていて、どうしようもなく寂しすぎている。

あー

卵の黄身だった頃に戻りたい。
薄くて固い殻に守られ、
卵白の中央にどっかりと浮かんでいた、
幸福な黄色だったあの頃に。
それが無理なら、いますぐ灰になって土にばらまかれて緑あふれる森に還りたい。
無垢な子どもが描いた絵の中にだけ存在する、こりすと、くまと、きつねと、うさぎと、色とりどりの鳥たちのいるあの天国のような森の土に灰になったわたしが溶けこむのだ。
そこにいる動物たちは誰もが、私のことを私だなんて思わない。なんて美しい風景だろう。

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