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プロジェクト・チーム・ビルディングの3ステップ

「〜さんと意見が合わないんです。」
「進めようとしているのに、〜さんだけが反対するんです。」

オフィスの自席にいると、そういう相談を受ける。UIデザインの話ではなく、”デザイナー”というキャラクターに対して行われる、"プロジェクトの進め方"の相談。毎週そんな話を聞いている中で、パターンが分かってきたので、ここに共有したい。


よくある失敗パターン

Aさん:世界を変える
Bさん:売り上げを伸ばす
Cさん:利益を最大化する
Dさん:コストカットする
たとえば、こんな風に目的の方向・範囲がバラバラだと話にならない。

Aさんがリーダーをしていて「みんなが、このチームでやりたいことは何だ?」と聞く
→上記の回答をされて「君たちの視野は狭い!」と声高らかに言い放つ
→Aさんのワンマンでプロジェクトを進めようとする
→Aさんは「みんなが付いてきてくれない」と嘆く。

ここで私に相談が来ることが多い。


ステップ1:課題は何ですか?

付いてきて欲しいのなら、まず越えるべき壁は「そもそも、なぜそのチームが設置されたのか、各自のアサインされた経緯・立場」の認識をそろえることだ。

相談に対する回答

「みんなが、このチームでやりたいことは何だ?」とAさんが聞いたのはなぜ?
→みんなに自分と同じ目線を持って欲しかった。
「Aさんがこのチームにアサインされた理由は?」
→マネージャーに世界を変えると言うミッションを与えられたから
「それなら、Aさんに与えられたミッションを開示し、B〜Dさんのミッションも開示してもらい、お互いの立場を明確にした上で、議論しなければならないポイントを、整理する所から始めた方が良いと思います。

成果物の例

課題管理表をおすすめしている。議事録でも良いが、論点が流れてしまうので、課題別に分けると良いと思う。

修正例

[人間としてのコミュニケーション開始宣言]
「私がこのチームのリーダーとしてアサインされたAです。」
「まずは、自己紹介をしましょう」A〜Dで一言ずつ。

[会議自体の課題宣言]
「本日から次回にかけて、このプロジェクトの目的の確認をしたいです。」
「私は上からこういうミッションを与えられていて、いつまでに何をしないといけないと言われているので、ご協力をお願いしたいです。

[会議に臨む姿勢の認識合わせ]
その上で、今後、議論を進めるにあたり、みなさんのお立場を把握したいので、順に聞かせていただきたいです。Bさんは、どういう経緯でアサインされたんですか?」
〜Dまでヒアリングして、箇条書きにする。

[前提知識の確認]
「私は上から”世界を変える”というミッションを与えられていて、このチームを任されているのですが、大変、抽象的です。具体化するために、みなさんの観点で課題を整理したいのですが、この件に対して、Bさん…(いきなりこんな抽象的なことを言われてもって感じだと思うんですけど)理解できますか?事前に何か聞いてます?

[前提の思想の確認]
Bさん自身どう思いましたか?不明点は?
→Aと見解が違う点があれば、課題管理表へメモ
〜Dまでやる。

[課題蓄積の認識合わせ]
Bさんの質問には、回答はこうです。
Cさんの質問には、次回の定例で回答します。
Dさんのご指摘については、今回こういう制約があるので、スコープ外としたいのですが、取りこぼしすべきではないと思うので、蓄積できるように管理したいです。

[各自の時間をもらった成果の確認]
また、今回の話を受けて、世界を変える範囲や意義を明確にする必要があると思いましたので、

[次回の議題の考えを提示]
次回までに私の方で作成し、皆さんにレビューしてもらおうと思います。

[意見を言える体制の構築]
時間になってしまいましたが、他、次回話したい内容がある方は、この課題管理表に書き込みをお願いします。編集権限はありますよね?


ステップ2:目的は何ですか?


目的の整理

リーダーであるAさんが目的を箇条書きにする。叩き台はあった方が良いし、これを誰かに任せることもしない方が良いと思う。Aさんがミッションを遂行したいのであれば。

以下例

ミッション:世界を変える
1 この分野で持続可能な状態にする。
 - 〜が〜になっていること。
 - 〜が〜になっていること。
 - 〜が〜になっていること。
2 活動を持続可能なものにするため、事業的な利益も追求する。ただし、1が無視されている状態にはしないこと。
 - 〜が〜になっていること。
 - 〜が〜になっていること。
 - 〜が〜になっていること。

会議前の状態

合意形成のよくある悩み

そこに対し、質問を受け付ける。

[発言が出ないパターン]
この時に、発言が出ずに困るケースはよく相談される。B〜Dは自分に何を期待されているか、見失っていることが多い。「Bさんの観点で、先週はこういうお話をしていただきましたけど、どうですか?」など、Aが期待する答えを素直に求めた方が良い。

ここで、よくある失敗は、自分が期待する回答が得られなくて、誘導尋問になってしまうこと。「違ったら教えて欲しいんですけど、〜」と前置きをするだけで、幾分かましになる。あとは、声音に気をつけると良い。


[話が”手法”の話になってしまう]
話を”手法”(=どうやるのか)に流さないようにすることが重要。とにかく”目的”(=なぜやるのか)を明確にしないと、途中でこける確率が高くなる。

コツとしては、議論の段階を明確にすること。「どうやってやるのかは、次回検討するとして、今日はその前提となる目的を明確にしたいです。」と伝え、今の話は課題管理表にメモしておいてもらえると、次回使えるのでありがたいです。と、聞く姿勢を取ると良い。

成果物

A〜Dの各分野、各役職の観点で、”目的”(=なぜやるのか)が明確になっていること。これが果たされたか確認するには、ステップ1が完了している必要がある。

以下例

ミッション:世界を変える
1 この分野で持続可能な状態にする。
 - 〜が〜になっていること。なぜなら、こうだから(Bの質問の回答)
 - 〜が〜になっていること。
 - 〜が〜になっていること。
2 活動を持続可能なものにするため、事業的な利益も追求する。ただし、1が無視されている状態にはしないこと。
 - 〜が〜になっていること。
 - 〜が〜になっていること。なぜなら、こうだから(Cの質問の回答)
 - 〜が〜になっていること。
3 追加(Dに指摘されて潜在的な目的に気づく)

会議前の状態


ステップ3:実行可能性・制約の確認

実行できないことを、いくら議論しても無駄である。課題管理表がここで効果を発揮してくる。積み残していた課題を消化していく。


整理方法の例

[時間軸で切って、実行可能にする]
壮大な計画を持っているならば、そこに行き着くまでのマイルストーンを引くと良い。小さく初めて、成果を出し、プロジェクトに投資し続けてもらう必要があるだろう。


[積み上げて可能にする]

すぐに犬を飼うことはできないが、今やれることは何かを明確にすることで、理想に近づくことができる。

気を付けるべきは、負債にならないこと。
そして、できれば、直近の取り組みで短期的な成果に繋がった方が、コストを削減されず、投資を継続してもらいやすくなる。

よく使う図 ※なぜ犬と暮らしたいかという目的も明確にした方が良い


ここまで来れば、要件が自ずと定義でき、開発時の仕様の議論も空中分解しない。これを、みんながやってくれないと、デザイナーが上流まで入って交通整理しないといけなくなるので、頑張って欲しい。頼まれれば入るけど、役職も尊重しないといけないので、なかなかに難しい…(結局入ることになるが…)


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