見出し画像

人の中に美しい蝶がみえた

父が亡くなった日に
アカショウビンがなきはじめた。
梅雨のような湿気がやってきて
ガラリと季節が変わった。

父とは遠く離れて暮らしているし、
入院して、食事ができなくなってからもう長い。
覚悟はしていたし、
自分の心はさほど変わらないのではないかと思っていたが。

やっぱり淋しいもんだね。

同じ地球の上に居た同志が
身体を脱いでここからでていってしまった。


父が亡くなった時
わたしは奄美の自宅で
カニ皿の絵を描いていた。

このご時世の移動自粛で、
葬儀は近くにいる家族だけでするとのこと。

人生で最初で最後の父の死を
こうやって迎えることになるとは
思ってもみなかった。

家族とともに
父を見送ることができないのは
想像した以上に辛いものだった。

それをわかってか
妹がマメに電話でつながってくれて
逐一状況を知らせてくれた。
そのやさしさが身に染みた。

何もできないわたしは、
蝶を描いてみることにした。

昔バリを旅した時
ひらひら飛んでいる蝶を指差して
「あれは魂だよ」
と教えてもらったことがある。

奄美でも、
蝶は魂だと考えられていたと
聞いたことがあった。

父の魂も
蝶になって
ひらひらと飛んでいるのだろうか。

もう病院のベッドに縛りつけられることなく
不自由な身体から自由になって
どこにでもいけるのだろう。

わたしは
アサギマダラを描きはじめた。
大好きな蝶だ。

アサギマダラの紋様は複雑で美しい。
えのぐ遊びをしていたら
えのぐが飛び散ったり流れたりして
たまたま偶然きれいに配列されて
できたような紋様だ。

細々した集中力を必要とする作業が
気持ちを落ち着かせるのに丁度いい。

アサギマダラを描いた後、
それをみあげるカニも描いた。

画像1

2020年5月4日
「アサギマダラを見送るカニ」

蝶を描いてみて
魂はこんなにも美しいものなのかと
あらためて驚いた。

魂は蝶になる。

わたしの中にも蝶がいる。
オットの中にも
あのひとこのひとの中にも
蝶がいる。

生きているみんな
みんなの中に、
間違いなく美しい蝶がいるのだと思った。

そう思うと世界が違って見えてくる。

Aコープに買い物に行けば
そこは蝶だらけだ。
集落にもいろんな蝶がいる。
職場にいっても蝶がパタパタ。

そこかしこに蝶だらけ。
なんて美しい世界。

人の中に美しい蝶をみて
生きていきたい。

父の亡くなったその日
くるくる動く
頭の中で
そんなことを思った。

あおきさとみ
カニ宇宙 https://kani-uchu.webnode.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?