政党の綱領をAIで可視化してみた⑤維新と共産の意外な共通点とは
綱領らしい綱領
前回までは、自民党と公明党、立憲民主党と国民民主党、社民党とれいわ新選組の綱領をそれぞれ比較してきました。今回は日本維新の会と日本共産党を比較します。
かなり無理のある組み合わせととる人もいると思いますが、筆者は違った見方をしています。
両党の綱領には、現状認識と政策課題、党の使命、基本政策といった綱領の基本要素がしっかりと書き込まれています。中身は全然違っていますが、建てつけがしっかりしている点は共通しているのです。
文字数でいえば、共産党は8党中トップの約15000、次が維新の約7000です。自民党が約2000、立憲民主党は約1800、れいわ新選組に至っては約400ですから、両党の綱領がかなりの内容を盛り込んでいることがわかると思います。
まず日本維新の会から見てみましょう。
少子高齢化と国家・地域の自立
頻出ワードから、日本が抱える最大の問題が、「少子高齢化」に伴う「人口減少」だと考えていることが明確にわかります。また、「自立する国家」「自立する地域」と2か所に「自立」の文字があるのが目につきます。これは、「自立する個人、自立する地域、自立する国家」を結党の理念として掲げていることを反映しています。
「現役世代の活性化」とあるのは、社会保障負担が現役世代に偏っていることなどから、負担軽減を目指す政策に伴う表現です。共産党を除く他の野党のワードクラウドが、「自由」「平等」「共生社会」「基本理念」「平和」「未来への責任」といった抽象的なスローガンに終始しているのに比べてとても具体的で、有権者にイメージしやすいと思います。
大企業の日本支配と生産手段の社会化
日本共産党の綱領はとてつもなく長いため、ワードクラウドにも多くの単語やフレーズが現れています。とくに目立つのは「社会主義」「大企業」「生産手段の社会化」です。また、「勤労市民」「農漁民」「アメリカ」「知識人」などの言葉も見られます。
このうち「社会主義」は、以下の記述に代表されます。
「大企業」は、次の記述に代表されます。
「生産手段の社会化」については以下のように記述されています。
この3つの引用部分を読むだけで、日本共産党の現状認識と将来ビジョンがわかります。「大企業」に関する記述が現状認識、「社会主義」に関する記述が党の使命、「生産手段の社会化」に関する記述が、改革の中心ということになるでしょう。
ただし、日本共産党は綱領で、第一段階として、まずは資本主義の枠内で革命を行うとしています。
もちろん、これは前段階に過ぎず、一丁目一番地は社会主義革命なわけです。ワードクラウドでは、社会主義革命こそが中心的な主張であることが見事に示されています。
真摯な姿勢の両党
日本維新の会も日本共産党も、綱領に対して真摯に取り組んでいることが見て取れたかと思います。他の野党のワードクラウドと見比べると一目瞭然です。
政党が世の中を変えたいと思えば、いまの社会のどこが間違っていて、どう変えるべきなのか、その手段は何かを、旗を高く掲げて訴える必要があります。だから資本主義から社会主義への革命を目指してきた日本共産党やかつての社会党の綱領には、いわば自分たちの思想・信条や革命理論を賭して彫琢した迫力があるのですね。
日本維新の会も綱領で、『これまでの政治の延長線上に豊かな国民生活を実現することはできない』と宣言しており、改革の方向として、「中央集権体制から、地域のことは地域で決められる地方分権体制への移行」や「最低所得保証制度」の創設などを訴えています。
各種の世論調査で、若い世代が日本維新の会を「革新政党」だと認識していたり、日本維新の会への支持率が立憲民主党を上回り始めたりしているのも、故のないことではないと思います。
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