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鬼退治、オニって誰だ?

前略

「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」


↑遙照山温泉(ラジウム霊泉)/岡山


「むかし、この山に鬼が住んでおり吉備津彦命(桃太郎?)が鬼退治にやって来た。鬼は矢が当たると逃げてこの地の温泉に入り、すぐに元気をとりもどして......」

遙照山(ようしょうざん)温泉に浸かってきました。
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あいかわらず見えないあれこれにやられ気味だったので、人里離れた場所へ避難!傷が癒えたかどうかはわからないけど......
【勝手に効能】波乱をいなすこころのゆとりは身にまとったはず!


二十年ほど前、ふらっと立ち寄った岡山で、「桃太郎っていうよそ者(侵略者)が、穏やかに暮らしていた人たちを鬼とか言って虐殺した」というもうひとつの本当の話を聞かせてもらったことがある。

写真の文言には「……温泉の湯元を埋めて、鬼を退治」と。やっぱりそうなのか!なんてひでーやつだ桃太郎ってやつは!



人の立場や気分なんていうものは、いともたやすく変わるもの、というお話です。


え?どんなときに変わっちゃうの?!
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たとえば都合が悪くなったとき。たとえば損得で考えはじめたとき。たとえば思い通りに相手が動いてくれないとき。たとえば余裕がなくなったとき。たとえば……。

いいとか悪いとかっていう話をするつもりはないんです。だって人はみな、そうやって自分を守りながら生き抜いてきた過去があるから。


ただ、ただそうは言っても忘れちゃいけないことがある。それは、どんなにがんばっても偉くなったとしても、人はひとりではなんにもできないってこと。

だってそういうものだから。

弱い人強い人、働く人働かなくていい人、歌う人歌わない人、出ていく人残る人、泣いてる人笑っている人、困っている人困らせている人、愛している人愛されてる人、エトセトラエトセトラ……。

笑っている人の向こう側には必ず泣いている人がいて、相手がいてこそ生かされているなんて話もよく聞きます。


わかっていてくれる

ぼくが訪ねる〈わざわざ訪ねてまでも会いたい人たち〉の共通点は、誰かのために自分の立場をしっかり守っていること。自分を一番に大切にしながら、目の前の人たちも大切にしている人。

やさしそうでむずかしいけど、ぼくが頼りたくなる人や頼ってくれる人は、相手の立場に立って気遣いのできる人。だから彼らとはいつだってごきげんで居られる。そしていつも訪ねる人たちを尊重してくれる。放ったらかすし、頼ってもくれる。信頼を持って関わってくれる。なによりも、いろんな立場をわかっていてくれる。いいも悪いも、へぇそうなんだ、って。

こんなに気持ちのいい関係はない。でも……。


鬼って?桃太郎って誰だ?

鬼たちは本当に鬼のパンツをはいてたの?金棒ふりまわして暴れてたの?金棒ってクワとかカマとかだったんじゃない?ツノって?

よそ者?地の者?

鬼が桃太郎の仮面をかぶっていることだって、桃太郎が鬼の仮面をかぶっていることだってある。気を抜くとぼくだって、知らず知らずの間に桃太郎にも鬼にもなってしまう。

だから今は最低限の信頼を保ちながら立場をわきまえて、「やらない」「動かない」という生き方をしている。線を引いて、それはそれこれはこれと。そうはいっても本当は、全部が根っこで繋がってるぜって思って生きている。

なぁ桃太郎。君が自分の都合だけで相手を鬼とか言って決めつける前にちょっとでも相手の立場を考えられていたら、もっとマシな物語になっていたかもしれないぜ。困っているのは、自分だけだと思ったら大間違いなんだぜ。みんなそれぞれ違うけど、困りごとは大なり小なり持っている。それをわかっていなければ、いつまでたっても身勝手な正義を振りかざすだけだぜ。

Grow up 桃太郎! 

小鬼ふぁいと。

草々


「おに」の語源は「おぬ(隠)」が転じたもの。元来は姿の見えないものこの世ならざるもの。

↑日本新聞協会広告委員会が「しあわせ」をテーマに実施した「新聞広告クリエーティブコンテスト」2013