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1型呼吸不全、2型呼吸不全の違い 覚え方 まとめノート

 すい@医学生です。
 呼吸不全とは、簡単に言えば酸素をうまく取り込めない状態のことで、きちんと言えばPaO2<60Torr=SpO2<90%のことを言います。

 よって、酸素解離曲線の
   SaO2:90%=PaO2:60Torr(呼吸不全の定義)
   SaO2:75%=PaO2:45Torr(静脈の酸素状態)

 は必須の知識です。

 そして、呼吸不全を発見した場合は、それがⅠ型かⅡ型かを分類する必要があります。
 分類方法は、
  二酸化炭素はうまく排出できるのをⅠ型(PaCO2<45Torr)
  二酸化炭素もうまく排出できないのをⅡ型(PaCO2>45Torr)

 としています。

 ただし、「この疾患はⅠ型かⅡ型か?」と聞かれた時に、どちらかパッと答えることができるでしょうか?
 また、「Ⅰ型とⅡ型のどちらがA-aDO2開大するか?」と聞かれてすぐに答えることができるでしょうか?(どちらも試験に出ます)

 今回は、「どうすれば簡単にこの疾患はⅠ型かⅡ型かを覚えるか、A-aDO2開大する疾患としない疾患を覚えれるか」のポイントをまとめましたので、メモしておきます。

 まず、結論から申し上げますと、

 「どこに異常が生じているか」

 を考えることで分類できるようになります。(あくまで医学的に正しいかというより、覚えやすくするためという観点でお願いいたします)
 ではまず、Ⅰ型呼吸不全から見ていきましょう。

1.Ⅰ型呼吸不全

 Ⅰ型呼吸不全とは、難しく言うと拡散障害、換気血流比不均等、シャントのいずれかが生じて、低酸素、正常(または低)二酸化炭素になっている状態のことです。これを「どこに異常が生じているか」でまとめると以下のようになります。

 口から肺胞までの酸素の流れ:〇
 肺胞から血液までの酸素の流れ:×(CO2は拡散しやすいので〇)

 したがって、肺胞壁に問題がある、または血管の流れに問題がある疾患が当てはまります。

 肺胞壁*が線維化して距離増加→間質性肺炎
 肺胞壁*の上に水がたまる→肺水腫、肺炎
 血液の流れが止まる(不均等になる)→肺血栓塞栓症
 シャントができる→肺動静脈瘻

*正確には肺胞壁というよりは間質

 ところで、肺胞気ー動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)は、簡単に言うと、肺胞の中の酸素量と動脈血の中の酸素量の差のことです。

 Ⅰ型呼吸不全では、
  口から肺胞までの酸素の流れ:〇
  肺胞から血液までの酸素の流れ:×

 ですので、肺胞内の酸素量は正常なのに、動脈血には酸素が上手く渡っていないことが分かりますね。
 すなわち、「酸素量の差が開く=A-aDO2開大」となるのです。

 最後に治療です。酸素が足りないだけなので、シンプルです。
 治療法
  酸素投与(二酸化炭素は上昇しておらず問題ないため)

 2. Ⅱ型呼吸不全

 難しく言うと、肺胞低換気や気道閉塞により低酸素、高二酸化炭素になっている状態のことです。これを「どこに異常が生じているか」でまとめると以下のようになります。 

 口から肺胞までの酸素の流れ:×

 したがって、気道に問題がある疾患になります。
 また、CO2は拡散能が高いので、確かに血液から肺胞までは拡散しますが、さすがに気道が閉塞している(口から肺胞までの酸素の流れ×)と肺胞に貯まって外に出ることはできません。 

 気道が狭小化する→COPD、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎(DPB) など
 肺から気道に空気を送る力が無い→重症筋無力症、ALS など

 ただし、注意しなければならない代表的なⅡ型呼吸不全の疾患に、COPDがあります。COPDの定義は以下のようになります。

 COPD=慢性気管支炎+肺気腫

 慢性気管支炎は気道が細くなりますので、気道に問題がある疾患(Ⅱ型)に該当します。ただし、肺気腫は肺胞構造が壊されて、気腫化するので、肺胞面積減少による拡散障害、換気血流不均衡(Ⅰ型)にもあたります。

 つまり、COPDはⅠ型とⅡ型を合併した疾患なのです。
 そして、合併した疾患は二酸化炭素の排出が上手くできませんので、定義上の分類はⅡ型呼吸不全になるのです。

 A-aDO2については、

 Ⅱ型呼吸不全では、
  口から肺胞までの酸素の流れ:× 

 ですので、肺胞にも血液にも酸素が行き渡らないことが分かります。
 すなわち、「両方とも酸素量が減る=A-aDO2は開大しない」のです。 

 以上より、Ⅰ型呼吸不全の代表的な疾患とA-aDO2が開大すること、Ⅱ型呼吸不全の代表的な疾患とA-aDO2は開大しないことは分かったかと思います。

 しかしながら、そもそも「どうしてこのように分類する必要があるのでしょうか?」
 次の章では、その理由を紹介します。

3.CO2ナルコーシス

 まず最初に結論から申し上げますと、
「Ⅱ型呼吸不全ではCO2ナルコーシスを引き起こすため、治療方法が異なるから」です。
 そのため、まずⅠ型かⅡ型かを見分ける必要があるのです。
 では、「CO2ナルコーシスとは何でしょうか?」

 そもそも呼吸調節は、延髄のCO2上昇の感知頸動脈小体と大動脈弓にある大動脈小体のO2低下の感知によって行われています。働きはCO2が増加・O2が低下すれば呼吸促進、逆なら呼吸抑制です。

  しかしながら、普段から慢性的にCO2が高い状態にあるⅡ型呼吸不全では、CO2が高いことに慣れてしまった延髄の呼吸中枢が働かなくなってしまうのです。

 細かいことを言うと、、
  末梢化学受容器(頸動脈小体と大動脈小体)では酸素の低下、二酸化炭素の上昇、phの低下の全てを感知します。中でも重要な酸素の低下について最も高い感度で検出すると言われています。
  一方、中枢化学受容器(延髄)では、髄液から情報を得ます。髄液中には血液脳関門を通過できるCO2のみがあり、髄液中のphしか感知することができないのです。

延髄の呼吸中枢が働かなくなる

 そして、この状態でⅠ型呼吸不全の治療でもある酸素投与を行うとどうなるでしょうか?
 頸動脈小体と大動脈小体の働きにより、O2は十分ですので、CO2は排出できないにもかかわらず、呼吸抑制がかかってしまうのです。

酸素投与で呼吸抑制がかかる
呼吸抑制によりCO2が上昇

 呼吸抑制がかかることで、CO2はさらに貯まってしまい、呼吸状態が悪化してしまいます。これをCO2ナルコーシスというのです。

 つまり、酸素投与だけでなく、CO2の排出も同時に行ってあげなければならないのですね。
 最後に、Ⅱ型呼吸不全の治療法についてまとめます。
 
 Ⅱ型呼吸不全の治療法
 酸素投与だけは×
 人工呼吸器管理(酸素+換気)
を行う

 こちらもCBTに出題されており、タメになります。ぜひ読んでみてください。


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