赤血球が鉄不足で小さく、ビタミン不足で大きくなるのはなぜか?

 こんにちは、すい@医学生です。
 今回は、貧血の分類について紹介したいと思います。

 あれ?貧血?とタイトルを見て思った皆様、安心してください。
 赤血球が大きくなったり、小さくなったりすると同時に貧血も起こるためこのように書いています。

 その貧血の分類に、
 ・鉄不足による小球性貧血
 ・大きさそのままの正球性貧血
 ・ビタミンB12や葉酸不足による大球性貧血
の3つがあるのです。

 ちゃんとその理由や分類についてお話していきますね。

1.小球性貧血

赤血球イラスト

 小球性貧血は、主に鉄不足によって起こります。

 鉄が不足する → 赤血球が小さくなる かつ 貧血になる

 このような流れになっているのです。
 ではなぜこのようなことが起こるのか解説していきます。

 赤血球は水とヘモグロビンという構造でできています。
 そして、そのヘモグロビンを作るには鉄が必要であるのです。

 ちなみに、ヘモグロビンとは

 ・4つのヘムと4つのグロビンから構成される
 ・ヘムは赤色色素を持ち、タンパク質である
 ・ヘムの真ん中には鉄が含まれている
 ・鉄の部分に酸素分子が一つ結合することができる

 つまり、一つのヘモグロビンにつき4つの酸素分子を運搬することができるということですね。

 そして、鉄が不足するとヘムも作ることができません。
 よって、酸素も結合することができずに、貧血になってしまうのです。
 そしてさらに赤血球にヘムが無い分、体積も小さくなってしまうのです。(諸説あり)
 こういった経緯があることから、鉄欠乏性貧血を小球性貧血に分類するようになりました。


 ところで、医学生にとっては赤血球は最も重要な細胞の一つです。
 なぜなら、赤血球はいろいろとイレギュラーであるからです。
 では、どんな点がイレギュラーかというと、、、

 ・核が存在しない
 ・細胞分裂しない
 ・ミトコンドリアやリボソームが存在しない

などです。いろいろヤバイですよね。(笑)

 まず核が存在しないということは、DNAを持っていない細胞だということです。
 生まれた瞬間は核を持っているのですが、大人になる時に脱核と言って、核を失うのです。
 なぜ失うかというと、

 赤血球を小型化することで、表面積を増やすことができ、酸素交換効率をあげるため

だというように言われています。(諸説あり)
 

 次に、赤血球は細胞分裂しないということについてです。
 一度血中に出た赤血球は核を持ちませんので、細胞分裂の仕様がないのです。
 そのため、赤血球は120日の寿命が来たら潔く細胞死して、脾臓などの臓器で分解され、ビリルビンなどの代謝産物が出てきます。
 (ビリルビンやその後の経路についても気になる方はコチラをどうぞ↓)

 その他、ミトコンドリアやリボソームなど細胞内でエネルギーを産生したり、新しくタンパクを合成する機構も持っていません。
 理由としては、

 ・血液中を流れるだけなので動くのにエネルギーが必要でない
 ・初めから寿命が来たら細胞死することを前提に作られている

などが挙げられるかと思います。

 以上の点から、赤血球は特殊な細胞であり、医学部のテストの選択肢などでよく引っかけに利用される分野です。(笑)


2.正球性貧血

血液写真1

 これは文字通り、赤血球の大きさはそのままで貧血だけ起こる状態です。
 一般の方が考える貧血はこの貧血が多いでしょうが、実際には頻度はあまり多くない貧血です。
 具体的には、溶血性貧血再生不良性貧血白血病が挙げられます。

 溶血性貧血では、

 血中で大人の赤血球が壊される場合と、赤血球の処理場である脾臓での破壊が亢進される場合とがあります。
 自己免疫性疾患で、自分の赤血球に対する抗体ができてしまうことで溶血することが多いようです。
 いずれにしても、大人になった後の赤血球が壊されるだけですので、大きさには影響しませんよね。

 再生不良性貧血では、

 赤血球を作る骨髄の幹細胞(細胞分裂する元の細胞)が脂肪細胞に置き換わってしますことで起きます。
 細胞分裂する幹細胞の数が減ると、作り出される赤血球の数も減ってしまうことで、貧血になります。
 中でも遺伝により元から幹細胞の死にやすい(アポトーシスしやすい)病気をファンコニ―貧血と言います。

 最後白血病は、

 皆様がご存じの通り、造血幹細胞のがんです。
 がんによって、赤血球の数が減少してしまいますが、大きさには影響ありません。

 このように、赤血球の数を減少させる病気ではないものの、赤血球の大きさには関与しないものが正球性貧血に当たります。

 ちなみに、全く関係ないですが、赤血球の中央のくぼみは表面面積を増やすためにあると言われています。
 これがあることで酸素交換効率が上がるようですね。


3.大球性貧血

血液検査写真

 大球性貧血はこのような流れになります。↓

 ビタミンB12または葉酸が不足する→赤血球が大きくなる かつ 貧血

 赤血球は骨髄で作られ、細胞分裂を繰り返した後、血液中に出て酸素を運搬するようになります。
 さきほど、細胞分裂はしないというように言いましたが、正確には誤りで、骨髄にいる未熟な赤血球は細胞分裂を行います。
 まだ、脱核はしておらず、DNAが存在しますので、細胞分裂を行うことができるんです。
 そもそも、もし細胞分裂できない赤血球しかいなければ、赤血球の数は減少するだけで、困りますよね。
 これをまとめると、

 骨髄にいる子ども赤血球は細胞分裂するが、血液中にいる大人赤血球は細胞分裂しない

とこのようになります。

 そして、ビタミンB12と葉酸はこのDNAを合成するのに必要な補酵素と呼ばれるものなんです。
 つまりこれらが不足すると、

 DNAを新しく合成できない→細胞分裂できない→赤血球数減少(貧血)

となります。

 そして、細胞分裂できないと赤血球は大きくなります。
 なぜなら、普通細胞は分裂するために成長して少し大きくなるからです。
 これが分裂できないと大きくなったままの細胞ができてしまうことになるからです。

 これよりDNA合成に必要な補酵素の不足は大赤血球性貧血を起こすのです。


 以上より、貧血の分類と赤血球の大きさについての説明は終了です。
 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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