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出会いを最高にするのはわたし『アバウト・タイム 愛おしい時間について』

何度でも出会いたい。出会いを追いかけたい。そう思える人と巡り合えたらすごく素敵。そんな映画だった。

最初は見てられないほどティムが危なっかしかったのに、そこで戻っても…なあ?とか、何やってんだよ早く戻っちゃえよとハラハラしていたのに、いつの間にか、愛おしむようにティムの横で彼の人生を眺めていた。ティムの目を通して語られるメアリーは彼の側でゆっくりと花開いていく。きれいな人だった。感情豊かで、かわいらしくて奔放さもあるのに、ゆったりと温かい。わかるよティム。何度戻ってもいいから、この出会いだけは手放しちゃいけないよね。

ゆっくりと(主にティムが)うろうろしつつも人生を動かしていく。悲しいことも、戸惑うことも、心から嬉しいことも、全てを抱きしめながら。
そういう時間を重ねる中でいつしかティムは時間をやり直すことをしなくなっていく。うろうろしていた足取りが確かなものになっていく。パパの秘訣を試していくと、その日々で拾うきらめきがさらに彼の足取りを着実なものにしていく。

ひとつひとつの出会いをこの上ない最高のはじめてに、別れをもう二度とない惜しみないものに。自分の時間を、自分だけの愛おしいものに塗り替えなおす。自分の力で。

今年は2度目の今年なのかもしれない。というかティムにこっそりと教えてもらった最後の秘訣のおかげかも。それぐらい今この時がきらめきを帯びている。

先月、書店より注文の電話が入った時に「2月14日」が搬入日になることを伝えると、年相応に落ち着いた耳元の声が「バレンタイン搬入ですね~」と軽やかに教えてくれた。何でもないような一日なのに、照れたような嬉しさを帯びるその響きが、こちらの心もほどいていった。「なんだか素敵ですね~」そんな言葉を交わして、受話器を置いた。
彼女は何度トリップしたら、そんなわくわくする言葉をかけられるようになったんだろう。移ろいゆく時間の中で、そんな軽やかに日々を味わう人、素敵。

この前は、ぎゅうぎゅうの電車のドアが開くと女の人が「失礼しま~す!!」と軽やかに声をかけて降りていった。衝撃。
「すいません」とか「降ります!」とか、申し訳なさや怒りをにじませながら人をより分けながら出てくることが多かったけど、そうだよね。みんなどこかのタイミングで電車は降りる。タイミングが違うだけで。
じゃあそうやって「失礼しまーす」ってさっぱりと降りていくの普通じゃん。入口の近くにいて声がかかってもすっきりと道を開けたくなる。じゃあね。良い一日を。そう一言添えたくなるくらい。

ああ、こういうふうに過ごす時を自分で味わって、素敵に塗り替えるんだ。前を向く言葉や行動は無理やりにでも自分の奥底から絞り出すんだと思っていたこともあったし、それが最善だと思ったこともある。
だけどそうじゃない。誰かによって前を向くバトン手渡させているかもしれないし、そこら中にきらめいている。それを自分で拾い上げるかどうかなんだ。

この映画の出会いもいいものだったな。これからも私は素敵な時間と出会い続ける。それってとても素敵。



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