男性クライマーは一人で登りに来た女性クライマーに話しかけてはいけない

ダメですよ。無闇に話しかけちゃ。来なくなっちゃいますから。必要があればスタッフとか同性のクライマーが話しかけますから大丈夫ですよ。関わらないであげてください。聞かれた時にだけ答えてあげたらいいんですよ。

なんで可愛い女の子が登ってる時にだけ妙に声を張って応援するんですか。あなたさっき初心者のおっさんが登ってる時にはスマホぽちぽちしてましたよね。「ちょっと行ったところにリオレウス沸いてんな。逆鱗欲しい」とか言ってましたよね。

見知った顔の女の子からは相手にされないからって初見の女の子に積極的に関わろうとするのはやめてください。なんで既に完登しているコーディネーション課題を急に登り始めるんですか。なんで急にキッズクライマーに優しくなるんですか。やめてくださーい。

(引用元:漫画「 鬼滅の刃」5巻)

とか思ってたらもう話しかけてる。女の子は熱量の高い応援をしてもらったから「この課題難しいですね」って社交辞令でアンサーしただけなのに「その課題は足上げない方が安定するよ」って打ち返してる。社交辞令で投げた球を。女の子の身長を考えたら足を上げないと届かないのに自分本位なアドバイスをしている。

で、案の定ムーブが合わなかったから女の子はちょっと気まずそうな顔になっちゃった。なのになんで普通に会話を続けようとするの?精神力強靭すぎませんかね。

「ボルダリングどれくらいやってるの?」「普段はどこで登ってるの?」「大学生?」やめろて。隣に行くなて。矢継ぎ早に質問するなて。常連のおばちゃんクライマーも苦虫を噛み潰したような顔してるぞ。おい。リオレウスでも狩ってこいよ。

そして遂に始まる自分語り。

俺は何年登ってるだとか、このジムはいい奴しかいないから困ったら気軽に聞くといいだとか、外岩に比べてジムが如何に安全かを聞かれてもいないのに語ってる。語るに落ちてる。外岩なんて数えるほどしか行ったことないのに。マミ岩4級くらいしかまともに打ってないのに。あの岩、高さも下地も安全な方だと思うんですけれども。

「外岩ですか、私もいつか行ってみたいです」

その瞬間、付近に走る緊張を常連のおばちゃんクライマーは見逃さなかった。「良かったら外岩ならいつでも連れて行ってあげるよ。今登ってた課題もコツがあるから教えてあげる」と、二人の間に割って入り助け船を出す。

危なかった。あのままの流れだったら最悪「アテンドするから一緒に行こうよ」とか言い出しかねなかった。何をアテンドしようと言うのか知らんけれども、その返答次第では連絡先を交換させられる流れもあり得た。おばちゃんのファインプレイにより一人のうら若き女子クライマーが救われたのだ。

それにしても美しい助け船だった。音もしなかった。彼女は自分が救われたことにすら気づいていないかもしれない。

一瞬判断は遅れたが僕の出そうとしていた助け船は撃龍船だったから助かった。「近くにリオレウスがいるから一狩り行こうぜ」くらいしか浮かばなかった。一時的に二人を引き剥がすくらいしか考えてなかったし、それでもダメなら「なんならもうちょっと行ったところにディアブロスもいるぜ」って、もろとも自爆するしかなかった。

いやこの人に限らず、妙に女子クライマーに教えたがる男性クライマーって結構いませんか?ワンチャン狙ってるんだろうけれども。皆が口を揃えて「あ~悪い人ではないんだけどね~」みたいな感じでお茶を濁すクライマー。

普段通ってる飲食店とかでも「いつもありがとうございます」って言われるだけで行きにくくなったりするのに、ボルダリングジムでよくわからん男に粘着されたら二度と来なくなるばかりか、ボルダリング自体が嫌になる可能性があるでしょう。絶対無闇に絡みに行っちゃダメですよ。

事実その後、彼女の姿を見た者はいませんしね。他のジムで元気に登っているといいんですけど。あの時結果的に自分は何もできなかったし、逆鱗も出なかったし、本当に誰も得しない虚しいお話ですよ。


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