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短歌

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2020年7月の記事一覧

短歌 #37 散る

短歌 #37 散る

悲しいことがあっても開かないし雲散霧消したし卒アルは

この夏の記憶は散ったキンカンも灼けるアスファルトの匂いもなし

体から立ち上る湯気冷ましつつ目蓋の皮膚の薄さを思う

散逸と散会と散る花びらとどれがいちばんこよないものか

さいはての前人未踏の場所に咲く見たこともない百合が満開

短歌 #36 根雪

短歌 #36 根雪

かなしみの記憶は薄まりゆくけれど決して消えずに根雪になりぬ

君の声や姿や匂いは無に帰して思い出すのはただ言葉のみ

青春のきらめきみたいな夢を見た鏡の中の老婆と対峙

白菜の漬物みたいな人生ね重石の下で酸っぱく居ます

さよならとこんにちはとのミルフィーユ最下層のは誰も知らない