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未来が見通しにくい時代の反動からなのか? フィアット600eメディア発表会

 フィアットの新しいEV(電気自動車)「600e」のメディア発表会に参加してきました。

 一昨年に発表された「500e」と同じ手法で、1955年のフィアット600とイメージを似せようとしています。発表会での説明も、「いかにフィアット600とデザイン上の関連性が高いのか」や、日常を「Dolche Vita」(イタリア語で“甘い生活”という意味で、)に変えるクルマといった情緒的なものに終始していました。イメージはイタリアですが、ポーランドで製造されています。

 600eは「4つの運転支援機能をフィアット・ブランドとしては初めて採用した」そうなのですが、資料やホームページを見るとそこに挙げられている4つの機能のうち3つは運転支援機能と呼ばれるものではありません。誰も気付かなかったのでしょうか。

 電動化と自動化が進めば進むほど、機能もデザインも似たようなクルマが増えてくるのは必然です。コモディティ化です。メーカーはなるべくそれを避けて、自社のクルマに少しでも独自性を与えたくなります。「ヨソのクルマとは違いますよ」とアピールして買ってもらいたいからです。その際に手っ取り早いのが、イメージとデザインです。

 MINIやVWビートルなど、20世紀の記念碑的な大衆車の外観とイメージがセルフサンプリングされて成功を収め、フィアットほか各社が追随しました。

 ともに空冷エンジンをリアに搭載していたのにもかかわらず、ビートルとフィアット500は水冷エンジンをフロントに搭載して前輪を駆動するように、メカニズムと外観はまったく関係なくなってしまったのです。600eは電気モーターで前輪を駆動し、2ドアでなく4ドアでもあります。同じなのは車名とイメージだけです。500はオリジナルの雰囲気を再現していましたが、600は500ほどではありません。

 “形態は常に機能に従う”ことを標榜してきた、それまでの自動車デザインのモダニズム原理から逸れてしまいました。モダニズムに部分的な終止符を打ったわけです。

 いずれにせよ、過去にアイコニックなモデルを持っている自動車メーカーは少しでも活用しようとアーカイブから引っ張り出してきます。未来が見通しにくい時代の反動からなのでしょうか。振り返るだけの過去を持っているメーカーはその分だけ有利なのかもしれませんが、600eは500ほどの成果を上げることができるのか興味津々ですね。

 

 

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