見出し画像

鯉のぼりのコンセプト

・なぜ鯉のぼりを作ろうかと思ったのか

私は伝統工芸が好きな小学四年生の時に、偶然サービスエリアで「郡上本染鯉のぼり」という江戸時代から作られている伝統工芸の鯉のぼりを見て、独特のデザインと色調に、衝撃を受けました。
そこから15歳まで興味だけあった鯉のぼりでしたが、15歳の時にテキスタイルデザインに興味を持ちました。テキスタイルデザインとして鯉のぼりを見た時に、とても可能性があると感じたため、15歳の時に作り始めました。はじめはコットンの布に、防染ノリで模様をマスキングし、顔料で描きいたものが始まりです。

・どの様に作られたのか
既存の鯉のぼりをつくるよりかは、これまでにない私にしか作れない鯉のぼりを作りたいと考えました。私は鯉のぼりを作る以前から、日常にあるモチーフから視覚的なデザインを見出すことをしており、それらのデザインと鯉のぼりを組み合わせることで、何か新しいことができると考えました。
特に多かったモチーフが「水」です。水はコンセプトの部分でもテーマとなっており、特に禅や道元禅師が説いた水の考え方のなどが参考になっております。

16歳の時に同じデザインの鯉のぼりを沢山作り、販売することをしてみようと志し、京都にある手捺染という染め方で染めている染色工場に依頼して染色をし、縫製と販売などは自分で行い、泳泳というブランドで販売し始めました。


・鯉のぼりを作ることによる社会的な意義

自分の表現したいことをただ単に表現することもできますが、鯉のぼりを単純な鯉のシルエットをした布として作ることはできなく、日本特有で日本人にしかない素晴らしい伝統文化だと思いながら作品を作っています。
徐々に失われつつある日本文化ですが、デザインを変えたり、サイズを住宅事情に合わせることなどで、素晴らしい伝統文化を存続させて人々に楽しみ、精神的な豊かさを体感して頂きたいと思い作っています。
多くの日本人は、遠くで靡く鯉のぼりを素敵だと思い「5月なのか」と季節を感じるなど、鯉のぼりはただの生地ではない特別なものだと思います。
それらの特別なものを作ることは文化的に意義を感じて、鯉のぼりに対する尊敬を込めて作っています。

・鯉のぼりのコンセプト

鯉のぼりは中国の黄河上流にある激流が連なった竜門と呼ばれる難所があり、そこを登り切った魚は竜になれるという登竜門伝説があります。鯉のぼりは、この登竜門伝説にあやかり、男の子が様々な困難に打ち勝って大成する立身出世の象徴として飾られます。
また鯉のぼりは逆風によって泳ぐ力強い光景からも困難や社会的な逆風の状態でもめげずに生きて欲しい象徴としても飾られます。

・デザインの哲学

この鯉のぼりの独特なデザインは、水がテーマになっています。特に水面がモチーフになっています。
絶え間なく変動する水面と、人間の心や人生で起きていく「陰と陽」を重ね合わせています。
波の中で波立っている場所が陽ならば、水面の窪みは陰であることをテキスタイルデザインにしています。
決してプラスとマイナスなどの評価をしているのではなく、人生の状態を抽象化し、俯瞰したデザインとなっております。
また日本画などの空白の美も参考にしており、多くを描かないシンプルなデザインにしています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?