(ネタバレ)映画版すみっコぐらしはR12にすべき作品であり、監督は子供向け作品に関わらせてはいけない鬼畜であるという話

本日、昨今のtwitterで話題の映画「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」を観に行きました。「実質Fate」「原作虚淵かと思った」「ジョーカーの方がマシ」と言われているアレです。

それが、完成度が高い良い映画であり心の余裕がある大人には観て欲しいが、小学校入学前後の子も見る子供向け映画としては最悪というところで、一緒に見に行った恋人と感想が一致したので、観終わってから言い合った感想を新鮮なうちにまとめたいと思います。

なお、この記事は「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」の核心に関わるネタバレを含むため、映画鑑賞後に読むことを強く推奨します

あらすじのふりかえり

元々いた所に馴染めなかったり、捨てられたりした生き物=すみっコ達は、それでも皆で集まって仲良く暮らしている。

ある日すみっコ達は、食事に行ったレストランの物置きで飛び出す絵本を見つけ、絵本の世界に吸い込まれてしまう。彼らはそこで「桃太郎」「アラビアンナイト」「マッチ売りの少女」など絵本の登場人物となって色々な冒険をするのだが、その中で一羽の灰色のひよこ?(以下ひよこ)と出会う。自分が何者か、どこから来たのかもわからず独りぼっちだというひよこに、すみっコ達(特にぺんぎん)が協力を申し出、一緒に行動するようになる。「みにくいアヒルの子」の白鳥の子と思ったら違って肩透かしをくらい、落胆するひよこに、すみっコ達は元の世界に帰ったら一緒に暮らすことを申し出、ひよこはそれを喜んで受け入れる。

やがて元の世界に帰るゲートが見つかった時、ひよこの出自に関する事実が判明する。ひよこは絵本の白紙のページに誰かが書いた落書きであった。だから仲間のキャラクターもおらず、外の世界に一緒に帰ることもできない。すみっコ達がひよこや犬・猿・雉など絵本のキャラクター達の協力を得て元の世界に帰ってきた後、絵本の白紙のページにひよこの姿を見つける。すみっコ達はひよこが寂しくないように、白紙のページに自分たちに似せたキャラクターや周りの世界を書き足してあげた。

この映画のどこが酷いか

■徹底的に救いがない

この映画のキーキャラクターであるひよこの設定は、だいたい「空の境界」の臙条巴であり、それ単体でも救いがないのですが、そのひよこに寄り添うのがぺんぎんであるというのがポイントです。

ぺんぎんは自分が何者かわからないひよこの境遇を自分に重ねて、ひよこのために奔走します。そのぺんぎんは元々はみだし者の集まりであるすみっコの中でもとりわけ孤独なキャラクターです。ねこはふろしき、とんかつはえびふらい、とかげはにせつむり、たぴおかやほこりは同種など大体だれかしら仲間がいる中、ぺんぎんは似た境遇の仲間がおらず、一人で本を読んでいる描写が多いです。その孤独を強調するかのように、前半ではとんかつとえびふらいなどの仲良し描写がこれでもかという程出てきます。そんな中、ひよこはぺんぎんにとって初めて現れた同じ境遇の仲間として描かれるのです。

やがて、ひよこが絵本の世界から外に出られないことが判明します。他のすみっコ達が早々に外へ出ていく中、最後まで外に出ることを決意できないでいるぺんぎんと、そこから距離を取って見送るひよこ。泣く。感動っていうか辛くて泣く。

そしてエンドロール。すみっコ達が白紙のページに皆が書いてあげたキャラクターとひよこが楽しく過ごしている絵が落書き調で流れます。最後に出る落書き調の1枚絵の内容は、それぞれ仲がいいキャラクターと寄り添っているすみっコたち。ひとりで絵本を抱いているぺんぎん。ひよこはいない。ここで恋人が泣き崩れました。

もう整合性取れてなくていいからひよこ載せてくれよ!頼む!

ラストシーンをひよこが救われたと解釈したとしても、ぺんぎんは救われていません。本作は責めるべき悪役も嫌なやつもおらず、ただただ世界に救いがなく、細かい描写やその順番によって救いのなさが意識的に、丁寧に強調されています。

このアイデアからハッピーエンドにする方法はいくらでもあったであろう中、この終わり方が一番設定と整合しており、筋書きとして綺麗なのはわかります。わかるけどさぁ……これ子供向け作品なんだよな……小さい子が何人も泣き崩れてて上映後の雰囲気が暗いんだよな……

■子供でもわかるくらい描写が丁寧(わからない方が良心的)

この映画はナレーション以外にセリフがありませんが、描写が非常に丁寧です。

絵本世界で最初に外へのゲートが開いたシーンで、サブキャラクター(おばけ)が早々に外に出ますが、その時に、絵本世界で身に着けた花だけがはらりと落ちます。この時点で絵本世界の物やキャラクターは外の世界に出られないという設定が暗示されているのですが、それはそのあとでより丁寧に説明されます。

ゲートを脱出する準備が整い、さぁ脱出するぞというときについてこないひよこ。ここまでの描写で、ひよこは自分がゲートを通れないことにもう気づいています。あれ、なんでついてこないのだろうと疑問に思うぺんぎん。その横をにせつむりが先に通り抜けて、貝殻だけが落ちてくる。ぺんぎん考える(以下イラスト)

にせつむり(外のもの)⇒ゲートに通り抜ける
拾ったかいがら(絵本世界のもの)⇒ゲートにぶつかる
ひよこ(絵本世界のもの)⇒ぶつかる描写はしないが、絵がちゃんと出る

おかげで就学前の子供でも、ひよこはゲートを通ることができないとセリフなしでわかるように配慮されています。よくもそんなことを(How dare you)

これに比べると、子供向けアニメ調の絵だが初めから深夜アニメでやっているまどマギや、ストーリーはヘビーだが子供達は理解できずカッコいいシーンだけが印象に残る仮面ライダー龍騎は、よっぽど良心的であったと判断せざるを得ません。

■こういう内容であることが宣伝で示されていない

朝のニュース番組「ZIP!」では、本作がこんな風に紹介されていました

映画すみっこぐらしの魅力:
「子どものころに戻れる」
「ナレーションはV6の井ノ原快彦」
「終盤、予想外の展開が!」

いや説明責任果たせてねぇだろ!!!!
お前ジョーカーを「生きる元気がわいてくる話です」「現代のフォレストガンプ」とだけ説明しちゃうやつか!!

恋人のコメント

一番泣いたところ:
「前の席で一緒に映画を見ていた子が『行くとこない。。。。』って泣きながらつぶやいてるのが聞こえて号泣しちゃった……」

感想:
「ダンサーインザダークよりも辛い。監督はラースフォントリアーより酷い。鬼畜」
「まどマギを劇場版から逆再生した感じ(ほむらちゃんがどんどん救われなくなる)」
「この話観て良かったねってニコニコ帰っていく子は将来まどかちゃん派になるからほむらちゃん派の私とは仲良くなれない」
「twitterの感想で『感動しました!』とか言ってる人がたくさんいてびっくりする。道徳の授業受けなかったのか。感動と辛くて泣くのは違う」
「ZIP!が一番悪い」

「この映画の感想が分かれたら、子育てが不安すぎるので別れてた」
僕「えっマジで」

おわりに

映画すみっコぐらし、大人向けにはいい映画だと思います。

ただし、「どう完成度を高めるか」「どう客を泣かせるか」に全力投球してしまっており、「子供がどう感じるか」は置いてけぼりにされたように思いました。

結果、小学校入学前後の子供には見せたくない話になっていました。本の落書きから生まれたひよこがあんな辛い目にあうの見たら子供落書きできなくなるわ。

鬱映画に耐性がある人はよければ観てみてください。子供は3歳未満くらいの子か、12歳以上の子だけ観ることをおすすめします。

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