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【逆境】緊急事態宣言下で見せた06ブルズの意地

グラウンドが使えない

4月25日から大阪府、兵庫県下に緊急事態宣言が発出された。

さわかみ関西独立リーグでもこの緊急事態宣言を受け、大幅に日程を変更。

その後、緊急事態宣言が延長となり、現在も花園セントラルスタジアムとくら寿司スタジアム堺が使用できない状況にある。試合ができなくなったのならまだしも、花園セントラルスタジアムを練習拠点としても使用している06ブルズにとっては全体練習ができないという一大事となってしまった。

そして日程の点でも、4月24日に和歌山ファイティングバーズと試合を行ったあとの試合は雨天も含め軒並み延期となったため、5月24日は丸1カ月ぶりの試合となった。

この試合はダブルヘッダーだったため、調整もそこそこ軽いものだった。
試合が始まる直前の円陣では遊馬ジェシー選手がまとめた詳細なデータを選手に伝え、選手にアドバイスを送っていた。

そして9時50分、試合が始まった。

1年半ぶりの勝利

試合は06ブルズが7対2で勝利した。

「とにかく頑張ったとしか言えないです」

1試合目終了後、振り返ったのは、6回1失点で勝利投手となった川口陽太郎投手。

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「試合自体が久しぶりだったので、とにかくキャッチャーのリード通りに投げました。野手が先制点を取ってくれたのであとは自信をもって投げました。悔やむとすれば(一度同点になるきっかけとなった)丹羽さんへのフォアボールですね」

女房役の虎弥太捕手も「ええ球来てたしよかったと思う」と手放しに誉めた。

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「でも長かったですね。勝ったの1年半ぶりなんですよ」

昨年は勝ち星なし、最後に勝ったのは2019年の10月8日。昨年は好投しても援護がないか、四球などから大崩れするかのどちらかだった。

この日はランナーを出しても打たせて取る投球が光った。三者凡退のイニングは6回の1度だけ。粘り強く変化球を織り交ぜて強力な和歌山打線を手玉に取った。

「あと僕、雨の日強いんですよ!」

そう、思い出した。筆者が初めて彼を見た時、2019年龍間でのオープン戦も雨だった。そして昨年好投した試合も、5回が終わった後に大雨が降ってコールドゲームとなっていた。

(「(雨男として一部で有名な)堺の糟谷(颯)さんと投げ合うことになったらそりゃあこんな雨になりますよね」とは川口談)

この日、試合が始まって間もなく雨が降ってきた。それも気にせず、のびのびと緩急をつけて投げた。1年半という長い年月の先に得た勝ち星は格別だっただろう。

「防御率がトップになったので、これからもっと頑張っていきます!」

防御率は0.61は現在、堂々のリーグトップ。雨の季節を越え、実りの秋を期待したい。

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振れている打撃陣

「めっちゃバット振れてる……」

スタンドで試合を見ていた井阪功大投手がチームメイトのバッティングを見て驚いていた。

チームは6回以外すべて安打を記録。凡打になった打球も鋭い。ダブルヘッダーの時間制限が設定されていたため、8回裏で終了した試合だったが、10安打。試合をするのも久しぶり、ましてや練習も、という状況のはずだが、選手たちはその逆境をはねのけて見せた。

「自主練の成果です!」先制打を放った主砲・千原和希は胸を張った。

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(先制打の千原はベンチに向けてガッツポーズ)

守備も無失策。桜井広大監督は「選手が頑張ってくれたおかげです」と選手たちを称えた。

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(好守備を見せた田中時織選手をグラブタッチで称える川口)

この1カ月を選手たちはしっかり自分たちの課題と向き合い、この日に備えていたようだ。

新戦力・川崎皇翔

ブルズに新しく外野手が入団した。川崎皇翔(かわさきおうしょう)。高校通算34本塁打を放った左のスラッガーだ。

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(川崎皇翔外野手)

「(前所属の)茨城アストロプラネッツで試合に出られない練習生契約になって、そんなときに(同じく前茨城の)孫入さんに相談して、ブルズに移籍することに決めました」

さっそく「1番ライト」で出場。3回には初安打も放った。

見ていて興味深かったのは、出塁してからのリードを他の選手よりかなり大きく取っていたことだった。

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(ベースが見えない位置までリードを取る川崎)

「リードは意図的に大きく取るようにしています」
本人も俊足だが、投手も気になるようだ。実際、何度も牽制球を投げていた和歌山・田井良樹投手だったが、4回目の牽制が悪送球となり、川崎は二塁に進んだ。そのあと千原の先制打につながっている。

「このリーグのレベルがわからなかったんですが、うまく試合に入ることができることができました。欲を言えば、成績はチームで全部一番になりたいです!」

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(孫入は「欲出すんじゃないよ」と一言。ちなみに写真は円陣の声出しに指名されるも「何を言ったらいいかわからない」という川崎)

8回には犠飛も放ち、初打点。上々のデビュー戦となった。
チームはケガなどに泣かされ続けてきたが、ようやく上位進出へのピースがそろいつつある。

川崎の加入が更なる起爆剤となるか、注目だ。

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ベースボールは終わらない

1試合目を見事勝利したブルズ。2試合目も勢いは止まらない。

2回に昨年の最優秀防御率投手、山川直人を攻め、2点を取った。が、その時点で雨が非常に強くなり、グラウンドは野球ができる状態でなくなっていた。中断の後、ノーゲームが宣告された。

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(ヒットを放つも打席がぬかるみ滑る田中時織選手)

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(中止直前の様子。雨粒が大きいうえに、普段はものすごく大きい声の遊馬ジェシー選手(中央)と松本聡選手(右)の声が雨の音でかき消されて聞こえない)

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(ノーゲーム宣告をした球審の片山さん。三塁線がぬかるんでいる様子がわかる)

この2試合目に先発していた中村雅友投手は「いつになったら僕は投げられるんですかぁ……試合再開はいつなんですかぁ……」と気落ちし、また、2試合目、バットを折りながらヒットを放った佐藤蓮選手はノーゲームとなってしまったため「バット折り損」となってしまい、「バット……誰か買って……」と力なさげに肩を落とした。

※中村投手は5月28日にリリーフ登板、佐藤選手も二塁打を放ちました

また、ダブルヘッダーの1試合目、本来なら9回に投げるはずだった白戸颯投手も「抑えで投げるはずだったのに、時間切れで宮前(晴輝)にセーブがついちゃった」と登板機会が流れたことを悔やんでいた。

しかしそこはキャプテン。「登板があったりなくなったりするのはリリーフの宿命」として「あと2つ勝ったら5割やな」(※5月24日当時) と次の登板機会に照準を切り替えていた。

彼らが共通して持っている思い。それは「野球をしたい」という純粋な思いだった。

次の試合は6月9日、神戸三田ブレイバーズとの一戦は三田のアメニスキッピースタジアムで行われるが、この試合がブルズのホームゲームとして行われる。

そして6月10日、無観客試合となるが、ようやく花園で試合ができることになった。

もうしばらく苦境は続く。だが、それをはね返す力を彼らは、このチームは持っている。

(取材:SAZZY 取材日:5月24日)

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